スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| 【--/--/-- --:--】
本袋 | 映画袋 | 音楽袋 | 記事袋
『グラン・トリノ』-観終わった後しばらく席を立てませんでした
Gran Torino

この映画すごい。タイムリーな時事的背景、移民問題、家族問題、老人問題、青春、愛、生、死・・・・・全部なんでもかんでも詰まっているのに全然説教臭くなく、ストーリーなんか結構ベタなのに笑えるし泣けるし、なんんなの、コレ?!

Gran Torino
Produced: 2008
Director: Clint Eastwood
Writing Credits: Nick Schenk, Dave Johnannson
Cast:
Walt Kowalski: Clint Eastwood
Sue Lor: Ahney Her
Thao Vang Lor: Bee Vang
Father Janovich: Christopher Carley
Barber Martin: John Carroll Lynch
Trey: Scott Eastwood
ミシガンで撮影され、主人公のウォルトがフォードにン十年勤めていた人で、しかもお隣にアジア人の移民が住んでいる、という設定は、真実味もあり象徴的でもある、という本当に理想的な、映画的な設定。実はデトロイト近郊で、去年の終わりに日本車だけを狙って壊す事件が起こり、日系企業の社員は、「目立つ行動をしないように」というおふれがでていたのです。つまり、80年代に起こったジャパン・バッシングがまた起こるかもしれない、と言われていた。

今の不況は日本も不況だし、日本車と全然関係ないんだけど、この主人公のウォルトみたいな人の中には、誤解してしまう人も沢山いる。しかも、一生モンとして買った家の近所が荒れ果てて、移民の子供のギャングたちに荒らされているとなったら、そりゃあ移民憎し、にもなるでしょう。

で、このウォルトの役を『ダーティ・ハリー』を演じたクリント・イーストウッドが演る、っていうところに意義があるのよ。自動車工場のラインで働いているような男の人たち、タフでラフで、男らしいことを誇りに思っているような人たちは、アメリカの漢の象徴みたいなクリント・イーストウッドを見上げていると思う。そういう人が演じているからこそ、こういう男の人たちが真剣にこの映画について考えるわけじゃん。これがトム・ハンクスとかじゃダメなんだよね。

・・・・そういう意味で、この映画は、もしかしたらデトロイトで起こり得たかもしれない人種間抗争を食い止めたかもしれないのだ。

設定やシーン、登場人物の一人一人に意義があってものすごい深い反面、ウォルトの頑固オヤジぶりがストレートに可笑しい。特に床屋のマーティンとの対話なんて、場内大爆笑。なんかさ、"Politically Correct"とか言って、悪い言葉を使わなかったり、人種ジョークを言わなかったりってのが「臭いものにフタ」をしているだけで、それで人種差別や嫌悪が無くなるわけじゃないし、逆にジョークにできなくなることによって却って閉鎖的になるんじゃないかってのが良くわかったね。

だってさー、隣に住んでるアジア人の家の娘のスーと仲良くなって、

「ビール持ってきてくれよ、ドラゴン・レディ」

なんて言うんだよ!これってむちゃくちゃ人種差別的だし、性差別的なんだけど、なんか笑っちゃうんだよね。別にスーのことバカにして言ってるんじゃないってわかるから。このときも場内大爆笑でした。

あと、最初の方でスーの一家がパーティするとき、食べ物を持ってぞくぞくと集まってくるアジア人の人たちを見ていると、私もイヤだった。同じアジア人だけど、彼らはベトナムのモン族?って人たちらしく(映画の中で詳しく説明している)、やっぱ日本人とは違うじゃん。自分と違う(と思われる)人たちが大勢集まってくる、っていうのは、それだけでなんとなく恐いものなのですよ。

それがさ、ウォルトがスーの弟のタオを不良グループから救った、というニュースが流れると、ご近所のモン族の人たちが、ウォルトの家に食べ物をぞくぞく持ってきて、玄関先に置いて行っちゃう。同じ行為なのに、今度は違う人種、他人に対するお礼とか、尊敬の念を持ってしていると思うと、なんとも暖かい気持ちになってくるから不思議。

で、最初はウォルトは「ほっといてくれ、もう持ってこないでくれ」とか言うんだけど、「あ、それって、この間のチキン・ダンプリング(チキンシュウマイ?)か?・・・・ビーフジャーキーより旨いんだよな・・・・」なんて、わかる~!食べ物の力って強力だ。

また、モン族の子供たち、スーとタオの役者さんが良かったね。特にスーはいい!この娘は、デトロイトで見つけてきたらしいよ。他のキャストの人たちも、本当のモン族の人たちなんだって。イーストウッドって、『硫黄島からの手紙』の時もそうだったけど、この辺しっかりしてるよね。探せばいるんじゃん!しかもすごくいいじゃん!こういうの見ると『SAYURI』とか「なんだよ」と思う。

で、スーなんですけど、アジア人の女の子の典型的なボテっとした身体なんだけどすごい可愛いし、英語もすごい上手くて、態度とかすごいアメリカナイズされていて、ボーイフレンドは白人だ。

ちなみにこのスーのボーイフレンドである白人の男の子を演じているのがイーストウッドの息子のスコットで、スーが黒人の不良に絡まれたとき、おたおたして助けられない。そこにクリント演じるウォルトが現れて、スーを助ける!!で、スーに

「なんであんななまっちょろい男と付き合ってるんだ!?」

なんて説教する!!なんかこれも色んなことを示唆していて面白いなー。

とにかく、移民にもこういう世代が出てくると、人種間の理解ってやっと出てくるんだなあと思った。だって、スーのお母さん英語しゃべれないし、おばあちゃんはウォルトと一緒ですごい差別的なんだもん(意地悪ばあさんそのものでそれも笑えるのですが)。それじゃあ理解しようたって難しいよね。真ん中に位置する人がいないと。

でもスーやタオは逆に、二つのカルチャーの板ばさみになって、それはそれで面倒臭いというのがまた良くわかるんだなあ。スーはウォルトに

「あなたはいい人だ。私たちの実の父親よりいい人だ。父はトラディショナル過ぎて堅物だし」

と言うとウォルトは

「俺も古臭くて堅物だ」と言う。するとスーは

「でもあなたはアメリカ人だもん」

と言う。そーなんだよね。モン族もかなり厳しそうだけど、日本だって韓国だって、アジアの国のもともとのトラディションに比べても、アメリカの個人主義や自由って、やっぱり「いいなあ」と思うんだよね。

ウォルトは、実の息子たちよりも、スーやタオと心を通わせるようになる。なんかそれも、家族ってなんなんだろう、ってすごく考えさせられた。「遠くの親戚より、近くの他人」とか言うじゃん。一緒に過ごす時間が長かったり、声をかければすぐ会える距離にいることって、重要なんだなあと。もちろん、会う気がないのなら、愛がないなら、近くにいてもしょうがないんだろうけど。

でもウォルトは、教会に懺悔しに行くと、二人の息子とあまり親密な関係ではないことを懺悔する。これも深いよね。家族だからって一番愛し合っているとは限らない。タオやスーと結んだ人間関係の方が、ウォルトにとってはよっぽど意義があるように見える。二人の息子は、ウォルトのことこれっぽっちも気にしているようには見えない。でも、やはり血縁である家族と心が通わない、というのを人は懺悔するものなのだ。

で、この教会の神父さんが27歳の神学校出たての神父さんで、頑固オヤジのウォルトは、「頭でっかちの若造」という風にしか見ない。この神父役の男の子は、色白にそばかす、ぷくぷくしていてレッド・ヘアで、もー正にコテコテの白人。この人とウォルトも最初わかり合えない。同じ白人同士でも、年齢差や環境で解り合えないこともある。

それに、タオを引き入れようとしているアジア系のギャング。しかもタオのいとこだ。同じ人種でありながら、しかも血縁でありながら足を引っ張り合う。でもこのワルたちは、同じ近所の黒人の不良、ヒスパニックの不良、そういう奴らに虐められたくないと、必死で突っ張っている内にどんどん深みにハマってしまう、というのもわかる。

最後のオチはもーベタベタで、私にも予想ついちゃうし、わかっちゃいるんだけど、泣けて泣けてしょうがなかったね。これって、西部劇とかのエンディングのオマージュなんだろうか。なんつーか、コテコテの王道で、どうなるかわかってるんだけど、でもだからこそ感動するというか。

最後にかかった曲が、クリントともう一人の息子、カイル・イーストウッドがこの映画のために一緒に作った曲らしいんだけど、この曲が流れている間、席を立てなかった。いい映画って、「あ、終わった、帰ろう」って思わないじゃない。余韻に浸っていたいというか、浸らされちゃう、というか・・・・・。

key Word
映画 グラン・トリノ クリント・イーストウッド ビー・ヴァン アーニー・ハー
ヒューマン・人間ドラマ | コメント(10) | 【2009/02/15 23:31】
本袋 | 映画袋 | 音楽袋 | 記事袋

PREV: サミュエル・L・ジャクソン [偉人伝外伝] 出演作品一覧
NEXT: 『ブッシュ』-チャーミングな出来損ないは一国を潰す

BOOKSMOVIESMUSIC ALL ARTICLES

It's stupid to say "don't watch it, if you don't like it"!! Click here to return Home!!
コメント
レビュー読んで、公開が益々楽しみになりました!ポスターからして頑固そうなイーストウッドが早く見たいです。
【2009/02/16 01:01】 URL | lifeonamars #mQop/nM.[ 編集] | page top↑
ケン・ローチなんだ。
イーストウッドが撮影に絡んだ映画は観たくね。と思ってたんだけど。
んじゃ、観てみようかな~。
それに、チュチュさんの記事読むと面白そうな気がしちゃうんですよね~;;
【2009/02/16 17:10】 URL | まーちゃん #.17RNwB.[ 編集] | page top↑
まーちゃん、

ごめーん、ケン・ローチ関係ないよ。テンプレに入ってたの消し忘れた!監督はクリントです。
【2009/02/16 22:01】 URL | チュチュ姫 #-[ 編集] | page top↑
あ、そうなんすか。
ちょっと残念。
まぁ、兎にも角にも劇場で予告編を観てからかな~。
お金払うんだったら。
【2009/02/18 17:10】 URL | まーちゃん #.17RNwB.[ 編集] | page top↑
試写会当たって観てきました。
うん、そうなんですよ。
予想がついちゃうから衝撃のラストっつーのはどうなの?と思うのですが、その予想がついちゃうウォルトの行動の一つ一つも何ていうか、やっぱり必要な手順だと思うんですよね。
それは置いといて、最初隣家に人がいっぱい集まってきて庭で儀式なのかただ料理するためなのか鶏(に見えたんですけど)に刃物を入れようとするのを「野蛮人め」とか言ってた頑固じじいが、その人たちのことをだんだん受け入れられるようになる過程が、上手く描かれてたなぁと思います。
自分達の習慣と全く違うことって、凄く異質で受け入れられない感じがしますよね?
よく、「鯨みたいに頭のいい動物を食べるなんて野蛮なこと信じられない!」とか、一時捕鯨云々で言ってる外国人がいたけど、こっちにしてみれば「牛の口からケツの穴に棒を通して丸焼きにするような奴らに言われたくない!」という訳です。
何か話が別の方向に行きそうですが……
私が、一番印象深かったのは、タオの変化と共にウォルトも変わっていったことです。
爺さんになったって、人は変われるんだな~と。

ラストの曲いいですよね。
もう少し早くジェイミー・カラムのヴォーカルに代わってくれてもよかったけど(^_^;)
【2009/04/15 17:22】 URL | まーちゃん #.17RNwB.[ 編集] | page top↑
まーちゃん、

そーだよねー。七面鳥だって、ケツの穴からたまねぎだのなんだの詰め込んで丸焼きにするって、一体どんなサディストが考えたのかと思っちゃう。でもおいしいからいいの。異文化を受け入れるのには、食べ物は強力なファクターです!
【2009/04/15 21:02】 URL | チュチュ姫 #-[ 編集] | page top↑
やっと公開になったので観て来ました。
ここ数年のクリント・イーストウッド監督作品はほとんど観ていますが、「グラン・トリノ」一番好きかも?
チュチュさんの言う通り、確かにベタなんだけどすごく笑えたし、考えさせられたし、泣かされたぁ。
いい映画でした。
【2009/04/26 00:22】 URL | codomo #yBfrOqTk[ 編集] | page top↑
codomoさん、

私は硫黄島もミリオンダラーも好きで、結構イーストウッドって合うみたいなんですよね。
【2009/04/26 07:49】 URL | chuchu #-[ 編集] | page top↑
チュチュさん、TBありがとう。
この映画観て、私は改めてチュチュさんのこと尊敬しましたよ。
本当にタフじゃないと生きてけないんじゃないかな、と思って。

http://thinkingdays.blog42.fc2.com/blog-entry-675.html
【2009/05/19 10:01】 URL | 真紅 #V5.g6cOI[ 編集] | page top↑
真紅さん、

えーなんで?デトロイトに住んでるから?

私なんかぬるま湯ですよー。うちの周りは環境いいし。私はどっちかって言うと、ウォルトの息子の家みたいな感じ(とほほ)
【2009/05/19 23:53】 URL | チュチュ姫 #-[ 編集] | page top↑
コメント、サンクスです!












管理者にだけ表示を許可する

すんません、トラックバック、スパムがひどすぎるんで、全面禁止にしました。トラックバックしたい人は、コメントと共に、自分とこの記事のURLくっつけといてくれればいいすから。
トラックバックURL削除


「嫌いなら観なきゃいいじゃん」と言うほど馬鹿げた理論はない!とアジテイトする『姫のお楽しみ袋』

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。