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『ディキシー・チックス Shut Up & Sing』-チックスこそが本当の愛国者だ!
Dixie Chicks: Shut Up and Sing

ディキシー・チックスって日本で知名度どの程度なのかわからないので説明しますと、女3人のカントリー・バンドで、グラミー賞何度も取っていて、スタジアム級のツアーやって、CD売り上げの記録を持っているという、超ビッグ・バンドであります。私はカントリー聴かないのですが、チックスがデヴューしたとき、若くて可愛い女の子がちゃんと自分たちで演奏できて、流行のポップスとかじゃなくカントリーを演る、というのはかなり話題になったので知っていました。

dixie chicks
dvd on amazon.com
Produced: 2006
Director: Barbara Kopple, Cecilia Peck
Cast:
Natalie Maines
Emily Robinson
Martie Maguire
George W. Bush
Rick Rubin
Chad Smith
Howard Stern
で、超ビッグになったチックスが、なんかブッシュの悪口言って大変な目に合ってる、っていうのは聞いた事があったんですけど、このDVDはそのドキュメンタリーで、これを見ると事の経緯が良くわかります。

まず、2003年、アメリカがイラクに侵攻する10日前、ディキシー・チックスは反戦ムード絶好調のロンドンでコンサートを演り、この公演で、

「私たちも同じ気持ちよ。この戦争はやりたくない。アメリカ大統領が私と同じテキサス出身なのを恥ずかしく思う」

と言う。これはメディアに載ってアメリカに届き、カントリーのファン層である保守派の人たちの怒りを買い、チックス・ファンたちが自らチックスのCDをゴミ箱に捨てたり、焼き払ったりし出す。カントリー系のラジオ局は、リスナーを失うのを恐れてチックスの曲を流さなくなり、結果チックスはバンドとして食って行けなくなるんじゃないかという危機にさらされる。

何が怖いって、自分の言ったことが一人歩きして行っちゃうことが怖いですね。コレを実際に言ったリード・シンガーのナタリーは、ほんの軽い冗談のつもりで言っただけなのに、受け取ったアメリカの愛国主義者たちは、

「戦争しようって時に、大統領の悪口を言うとは非国民だ」

と大騒ぎするんですね。別にイラク侵攻がなくても、あんな英語が出来ない人と同郷だっていうのだけで恥ずかしいと思うのですが、あれよあれよと言う間におおごとになって行き、バンド関係者はすぐに会議を開いてどう対処するか話し合い、謝罪もしたし、インタヴューにも応えた。しかし、怒る大衆は止められない。

このDVDはたまたまこの事件があったから撮っただけのようなんですが、ディキシー・チックスというバンドの人となりを良く伝えていて、バンドの自叙伝的なフィルムとしても楽しめます。彼女たちはみんな結婚していて子持ちで、バックステージにいつも旦那や子供がいる。マネージャーとも仲が良く、ツアーや新しいアルバムの戦略など、必ずメンバー全員とマネージャーが集まって話し合う。良くあるロックバンドのフィルムのように、しょっちゅう酔っ払ってパーティ三昧ではないし、レコーディングでエゴがぶつかり合うような場面もない。みんな民主的に仕事をしていて、好感が持てる。

笑っちゃったのは、バンドのメンバー3人が全然セレブでもなんでもない普通の女性たちで、

「なんかさー、双子生んでから老け込んだわよー。朝起きるのが辛いの。」

「あたしもよー。旦那に1000ドルやるから起こさないでって言っちゃった」

「あたしなんか、おふぇらしてあげるから寝かせてって言ったわよ」

とか言ってぎゃははは!と笑ったり。彼女たちはなにかと言うとこのおふぇらジョークが出るところが笑える。

それとか、テキサスでのコンサートのとき、ナタリーを暗殺する、という脅迫状が届くんですね。で、メンバー3人とマネージャーが真剣に、セキュリティをどうするか話し合っているんですけど、

「銃を股間に隠されたらどうするの!股間はチェックしないじゃない!」

とか真顔で言いながら、みんなサンドイッチ食ってんですよね。なんかショウの直前か直後みたいで、すげえファンキーな衣装にヘアスタイルで、すごいお腹すいているらしく、むしゃむしゃサンドイッチ食いながら真顔でどうやって股間に隠した拳銃をボディ・チェックするか話し合ってて、なんか怖がってるくせに腹も減ってるし、って結構リアルなんでしょうけど、端から見てるとむちゃくちゃ可笑しいです。

あと、この人たちは、本当に音楽が好きなんだなあ、というのが良くわかって、そこが好感持てましたね。特に、一番おとなしそうなマーティって言う人。彼女は、もう一人のメンバー・エミリーと姉妹で、二人は10か12くらいでもうバンドを始め、それからずーっと今までやってきた。

「だからこれは仕事じゃない。もうライフスタイルなのよ」

と、今回の政治的な事件に巻き込まれたことで仕事を干されたらどうしよう、という不安をいつも持っている。だけど、実際に「大統領がテキサス出身なのを恥ずかしく思う」と言ったナタリーを責めるようなことはせず、自分たちはバンドなんだ、お互いをサポートし合うのは当たり前だ、という姿勢を崩さないのはすごい。終わりの方でマーティは、

「ナタリーは自分のせいでこんなことになっちゃった、とすごく責任を感じているみたい。いつもそんなことない、あなたは間違ったことなんかしていない、とクビしめてやりたいくらいなんだけど、でも、ナタリーは一人で責任を背負い込んじゃって、すごく辛そうなの・・・。だから、もし、彼女がもう止めたい、バンドも辞めたい、って言ったら、辛いけど、アタシも一緒に止める!」

って言って、泣き出しちゃうんですね。なんかそれって、本当に身近な友達が感極まって泣いちゃったのを見ているようで、もらい泣きしちゃいました。

でも実際、爆弾発言のせいでカントリー系のラジオ局に干されてからは、ラジオでかけてもらえるような曲を作る必要がなくなり、音楽的にはものすごい自由に飛躍することが出来たようです。レッチリのプロデューサーとして有名なリック・リュービンを向かえ、そのつながりでレッチリのデトロイト出身ドラマー、チャド・スミスをゲストに、ロックっぽい曲にもチャレンジ。チャドがドラム・セットに座っているのを見て

どっかで見たことあるな~ウィル・フェレルそっくり!チャドに違いない

などと思っていたら、リック・リューベンも出てきて、なんだなんだと思ってたら、これが新しいアルバムの製作風景だったのですた。

で、その曲の歌詞が、やはりブッシュ発言問題に対する解答みたいな内容になっていて、ああ、本人たちにその気がなくても、結局まわりに「政治的な発言だ」と受け取られてからは、政治的な曲を書くハメになるのだなあ、と思いました。ナタリーが「好むと好まざるとに関わらず、今チックスはそういうバンド(言論の自由の象徴)になってしまった」と言っているように。

そもそもさあ、「アメリカ大統領が私と同じテキサス出身なのを恥ずかしく思う」って、政治的発言なのかよ。こんなの、普通の人が街角や職場や家庭でしている会話と変わらないじゃない。それをことさら取り立ててぎゃあぎゃあ言う右翼系の人たちの頭の堅さ、違う意見を受け入れない閉鎖性。アメリカって開放的で自由な国じゃなかったの?

特にムカついたのが、このDVDの題名になっている「Shut up and sing」と実際に言ったLaura Ingrahamというコメンテーター。ミュージシャンは自分の意見を言わず、ただ歌だけ歌ってろってこと?私は個人的に、余り音楽が政治的になるのは好きじゃないのですが、ミュージシャンとかがが政治のことに口出すな、ってのはどうよ。こういう公の人たちが率直に自分の意見を言えて、それを聞いた一般の人たちが常に政治や社会問題を身近に感じられるのが民主主義の国ってもんじゃないですか。しかもこのコメンテーターはさらに、「言論の自由ってのは、公共の場でやってはいけない」って言ったそうです。そういうのをファシズムって言うんじゃないの?!自分で言ってることわかってんのかね、この人。

でもね、このDVDの教訓はね、「言論の自由と言うのは保証されているものではない。勝ち取るものだ」と思いましたね。ブッシュがこの件について、

言論の自由は2ウェイ・ストリートだ。言いたいことを言って、だからお前らのCDを買わない、というのも自由だ」

と言うんだけど、まさにその通りなんだよね。言論の自由を貫くことによって仕事を失ったり、殺されたり、色々な犠牲を払うかもしれない。ディキシー・チックスは、そんなつもりは毛頭もなく発言しちゃったわけなんですが、戦わなきゃならない、と決めた後は潔く戦った。そこが偉いと思ったね。自分が言ったことは、失礼だったかもしれないけど間違っているとは思わないし、あの程度の発言で、私たちの音楽をボイコットしたりする方がおかしい、という姿勢を曲げなかった。

しかも、問題発言をしたロンドンの同じ会場で再びコンサートを開いた2006年だったかな、言うんだよ。

「犯罪現場に戻って来たわ・・・何を言おうかしら、とか全く考えてこなかったのだけど、やっぱりアメリカ大統領が私と同じテキサス出身なのを恥ずかしいと思うって言っちゃおうっと!」

だって!もーすごいコイツ。お客さんも拍手喝采していました。

そして新しいアルバムは2007年のグラミー賞で5部門受賞。マーティがバンド辞める必要なくなって良かった!と思ったけど、本当に素晴らしいのは、アメリカはまだ大丈夫だ、良心的な人たちがたくさんいる、って思えたことだよね。本当にあのままチックスが闇に葬り去られていたら、この国に対する不信感がどんどん募るところだった。だって、ブッシュ一家が石油のために戦争起こしちゃえるんだから、アメリカがサウジやアフガンみたいに、一部の王侯貴族だけめちゃくちゃ裕福で、他の99%の人民が奴隷のように扱われている、なんて国にならないとは言い切れないんだよ。だから言論の自由って大事だし、普通の人々が政治に関心を持つって言うのも大事だと思う。その両方のために戦ったチックスこそが本当の愛国者だよ。

key Word
映画 ディキシー・チックス ブッシュ カントリー 言論の自由
考えさせられた映画 | コメント(1) | 【2008/07/27 01:35】
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コメント
このバンド知らなかったんですけど、
その姿勢がカッコいいですねえ!!
とんがってる部分が、
日本で言うと清志郎に似ています(^^)。
【2008/08/09 12:53】 URL | 波野井露楠 #-[ 編集] | page top↑
コメント、サンクスです!












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