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『ディス・イズ・イングランド』-ハッピーエンドじゃないけど希望がある
This Is England

背景は1983年、イギリスのとある町。12歳のショーンは、パンク全盛期のご時勢にベルボトムを穿いていると学校でからかわれる。からかいが前年のフォークランド戦争で死んだ父親のことに触れると、ショーンはブチ切れて、ケンカをしてしまう。校長室から開放された帰路の途中、近所のスキンヘッズがたむろしているところに通りかかる。スキンヘッズたちはショーンをからかおうとするが、ショーンが学校で馴染めず、今日もケンカしたばかりだと言うと、スキンヘッズのリーダー格であるウディは、ショーンを傍らに座らせ、話を聞いてくれる。

This is England
dvd on amazon.com
Produced: 2006
Director: Shane Meadows
Writing Credits: Shane Meadows
Cast:
Shaun: Thomas Turgoose
Combo: Stephen Graham
Cynth: Jo Hartley
Milky: Andrew Shim
Lol: Vickey McClure
Woody: Joseph Gilgun
Smell:Rosamund Hanson
こうしてスキンヘッズたちと仲良くなったショーンは、お母さんに頼んでスリムのシーンズと、Dr.マーチンのブーツを買ってくれとせがむ。Dr.マーチンは子供用のサイズがなかったので似たようなブーツを買い、スリムのジーンズを穿いて、ウディの家に行き、ウディの彼女ロルに頭を剃ってもらう。

「これで仲間の一員にしてくれるんでしょ?」と聞くショーンにウディは、

「ダメだよ。ベン・シャーマンのシャツがなくっちゃ」と冷たく言う。ショーンがしょんぼりしていると、

「サプラーイズ!」

って感じで、ロルがシャツとサスペンダーをプレゼントしてくれる。

この映画すごくいいの~!あんまり良過ぎて、レヴューが書けない。もう5、6回書いてる。言いたい事が多過ぎて、端折れないんだけど、なんとかがんばって、短くまとめます。

何がそんなにいいかって、登場人物の気持ちがすごく良くわかるところなんです。スキンヘッズたちはいわゆる町の不良なんだけど、彼らが独特のファッションをしてつるんでいるのは、仲間が欲しいからなんだなあ、と言うのが良くわかる。12歳のショーンは、父親を失くし、悲しみから内に籠もり、何者ともコネクトできないのだけど、このスキンヘッズたちは十代後半なのに、ずっと年下のショーンを優しく迎えてくれる。そういう人たちに仲間と認めてもらいたくて、Dr.マーチンを買ってくれと母親にせがむショーンが愛おしいと思った。

きっと他のスキンヘッズの子たちも、同じような気持ちを持っていて、自分と唯一つながることの出来る仲間をすごく大事にしている。こういうのを見ると、若い子たちの過激なファッションや行動で、色々なレッテルを貼るのは間違いだなあとしみじみ思う。ウディもロルもショーンも、スメルもミルキィもみんなすごくいい子なのよ。

と、ほのぼのしているところへ、コンボというちょっと年上の、20代後半くらいのスキンヘッドが3年半のお勤めを終えてムショから帰ってくる。それを迎えるウディは、コンボはオレをかばってムショへ行き、絶対にオレを売らなかった、と仲間に紹介する。

しかし話をしているうちに、コンボはかなりマズイ、とわかってくるんですね。彼はマジにWhite Power系の白人至上主義のスキンヘッドで、ジェイルで黒人に意地悪されたこととか、ものすごい敵意のあるジョークを使って面白おかしく話す。ウディの親友・ミルキィは黒人(ジャマイカン)の男の子なので、みんないやーな顔をしているのですが、コンボは、イギリスの失業者が多いのは移民のせいだ、もともとイギリス人である白人が手が出ないようないいアパートに、大勢のパキ(「ジャップ」みたいな、パキスタン人に対する差別用語)が住んでいる。

「This is England、俺たちの国を取り戻すんだ!そのための戦争をするんだ!Are you ready!」

とウディたちをアジるわけなんです。

で、ウディとロルはコンボと決別するのですが、ショーンはコンボに感化されて、白人至上主義のグループにハマって行き、観ているこちら側としては非常にハラハラする。でも製作者は、このコンボさえ悪者には描かない。コンボはショーンの痛みがわかる。怒りがわかる。それは悲しみから出てくる苦い感情で、どこにも行き場のない、ぶつけどころのない感情。

でさ、コンボが白人至上主義になってしまう気持ちさえも、見ている側にわからせてしまうところがすごいのよね。コンボのバックグランドは全く説明されないんだけど、ショーンや、他のスキンヘッズとの絡みの中でなんとなく想像できる。きっと崩壊家庭から来た、孤独な少年だったんだろうと思う。そして、人一倍、誰かに愛して欲しいと思っているのに、そういうものがみつからなかったのかな・・・・その悲しみから出る怒りをぶつける先が、人種差別だったのではないか。

でも、コンボみたいなキャラを悪者にしないからといって、「みんないい人です」みたいな日和見な話じゃないの。なぜ不良になる若者がいるのか、なぜ人種差別はあるのか、ということが良くわかる。私は自分も結構不良だったのに、このスキンヘッズたちを「大丈夫かね、この子たちは」と偏見で見てしまった。でもこの映画の製作者は、この子たちが本当はどんな子たちで、何を考えて、感じて生きているのか、良くわかっている。その真実をまっすぐ描いている姿勢と、キャラたちに対する愛情が、ものすごく私の心の琴線に触れました。

しかも1983年と言ったら、自分もこの世代で、ファッションや音楽を通してイギリスと言う国に対しても憧憬があったから、Dr.マーチンやスリムのジーンズとか懐かしかったんだけど、同時にフォークランド戦争や、サッチャー政権下のフラストレーションがあの頃のパンクやメタルに反映されていたと気付かされて、ハッとなったりもした。

最後はハッピーエンドじゃないのね。事の結末、と言う意味では。でも、10代の頃の出来事って、誰にとってもその後の人生に与えるインパクトが強いじゃない。そういう意味では良かったと思う。最後、ショーンが海に白人至上主義の旗を捨てるシーンで、『Please, Please, Please, Let Me Get What I Want』がかかるんだけど、この歌って、『ニューヨーク・ドール』で初めて聴いたときから切ない曲だなと思っていたんだけど、きっとこの曲を歌っている人は、自分が本当に、心底欲しいものを手に入れられないか、手に入れられないことがわかっているんだと思うのね。そんな胸が締め付けられるような曲なんだけど、でもすごく美しい曲で、欲しい物が実際に手に入らなかったことよりも、そのことによって湧き出た感情が美し過ぎる、って感じの曲で、この映画も、同じような美しい映画だと思ったわ。

key Word
映画 スキンヘッズ 白人至上主義
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この映画がすごい!! | コメント(0) | 【2008/07/31 08:20】
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『ディキシー・チックス Shut Up & Sing』-チックスこそが本当の愛国者だ!
Dixie Chicks: Shut Up and Sing

ディキシー・チックスって日本で知名度どの程度なのかわからないので説明しますと、女3人のカントリー・バンドで、グラミー賞何度も取っていて、スタジアム級のツアーやって、CD売り上げの記録を持っているという、超ビッグ・バンドであります。私はカントリー聴かないのですが、チックスがデヴューしたとき、若くて可愛い女の子がちゃんと自分たちで演奏できて、流行のポップスとかじゃなくカントリーを演る、というのはかなり話題になったので知っていました。

dixie chicks
dvd on amazon.com
Produced: 2006
Director: Barbara Kopple, Cecilia Peck
Cast:
Natalie Maines
Emily Robinson
Martie Maguire
George W. Bush
Rick Rubin
Chad Smith
Howard Stern
で、超ビッグになったチックスが、なんかブッシュの悪口言って大変な目に合ってる、っていうのは聞いた事があったんですけど、このDVDはそのドキュメンタリーで、これを見ると事の経緯が良くわかります。

まず、2003年、アメリカがイラクに侵攻する10日前、ディキシー・チックスは反戦ムード絶好調のロンドンでコンサートを演り、この公演で、

「私たちも同じ気持ちよ。この戦争はやりたくない。アメリカ大統領が私と同じテキサス出身なのを恥ずかしく思う」

と言う。これはメディアに載ってアメリカに届き、カントリーのファン層である保守派の人たちの怒りを買い、チックス・ファンたちが自らチックスのCDをゴミ箱に捨てたり、焼き払ったりし出す。カントリー系のラジオ局は、リスナーを失うのを恐れてチックスの曲を流さなくなり、結果チックスはバンドとして食って行けなくなるんじゃないかという危機にさらされる。

何が怖いって、自分の言ったことが一人歩きして行っちゃうことが怖いですね。コレを実際に言ったリード・シンガーのナタリーは、ほんの軽い冗談のつもりで言っただけなのに、受け取ったアメリカの愛国主義者たちは、

「戦争しようって時に、大統領の悪口を言うとは非国民だ」

と大騒ぎするんですね。別にイラク侵攻がなくても、あんな英語が出来ない人と同郷だっていうのだけで恥ずかしいと思うのですが、あれよあれよと言う間におおごとになって行き、バンド関係者はすぐに会議を開いてどう対処するか話し合い、謝罪もしたし、インタヴューにも応えた。しかし、怒る大衆は止められない。

このDVDはたまたまこの事件があったから撮っただけのようなんですが、ディキシー・チックスというバンドの人となりを良く伝えていて、バンドの自叙伝的なフィルムとしても楽しめます。彼女たちはみんな結婚していて子持ちで、バックステージにいつも旦那や子供がいる。マネージャーとも仲が良く、ツアーや新しいアルバムの戦略など、必ずメンバー全員とマネージャーが集まって話し合う。良くあるロックバンドのフィルムのように、しょっちゅう酔っ払ってパーティ三昧ではないし、レコーディングでエゴがぶつかり合うような場面もない。みんな民主的に仕事をしていて、好感が持てる。

笑っちゃったのは、バンドのメンバー3人が全然セレブでもなんでもない普通の女性たちで、

「なんかさー、双子生んでから老け込んだわよー。朝起きるのが辛いの。」

「あたしもよー。旦那に1000ドルやるから起こさないでって言っちゃった」

「あたしなんか、おふぇらしてあげるから寝かせてって言ったわよ」

とか言ってぎゃははは!と笑ったり。彼女たちはなにかと言うとこのおふぇらジョークが出るところが笑える。

それとか、テキサスでのコンサートのとき、ナタリーを暗殺する、という脅迫状が届くんですね。で、メンバー3人とマネージャーが真剣に、セキュリティをどうするか話し合っているんですけど、

「銃を股間に隠されたらどうするの!股間はチェックしないじゃない!」

とか真顔で言いながら、みんなサンドイッチ食ってんですよね。なんかショウの直前か直後みたいで、すげえファンキーな衣装にヘアスタイルで、すごいお腹すいているらしく、むしゃむしゃサンドイッチ食いながら真顔でどうやって股間に隠した拳銃をボディ・チェックするか話し合ってて、なんか怖がってるくせに腹も減ってるし、って結構リアルなんでしょうけど、端から見てるとむちゃくちゃ可笑しいです。

あと、この人たちは、本当に音楽が好きなんだなあ、というのが良くわかって、そこが好感持てましたね。特に、一番おとなしそうなマーティって言う人。彼女は、もう一人のメンバー・エミリーと姉妹で、二人は10か12くらいでもうバンドを始め、それからずーっと今までやってきた。

「だからこれは仕事じゃない。もうライフスタイルなのよ」

と、今回の政治的な事件に巻き込まれたことで仕事を干されたらどうしよう、という不安をいつも持っている。だけど、実際に「大統領がテキサス出身なのを恥ずかしく思う」と言ったナタリーを責めるようなことはせず、自分たちはバンドなんだ、お互いをサポートし合うのは当たり前だ、という姿勢を崩さないのはすごい。終わりの方でマーティは、

「ナタリーは自分のせいでこんなことになっちゃった、とすごく責任を感じているみたい。いつもそんなことない、あなたは間違ったことなんかしていない、とクビしめてやりたいくらいなんだけど、でも、ナタリーは一人で責任を背負い込んじゃって、すごく辛そうなの・・・。だから、もし、彼女がもう止めたい、バンドも辞めたい、って言ったら、辛いけど、アタシも一緒に止める!」

って言って、泣き出しちゃうんですね。なんかそれって、本当に身近な友達が感極まって泣いちゃったのを見ているようで、もらい泣きしちゃいました。

でも実際、爆弾発言のせいでカントリー系のラジオ局に干されてからは、ラジオでかけてもらえるような曲を作る必要がなくなり、音楽的にはものすごい自由に飛躍することが出来たようです。レッチリのプロデューサーとして有名なリック・リュービンを向かえ、そのつながりでレッチリのデトロイト出身ドラマー、チャド・スミスをゲストに、ロックっぽい曲にもチャレンジ。チャドがドラム・セットに座っているのを見て

どっかで見たことあるな~ウィル・フェレルそっくり!チャドに違いない

などと思っていたら、リック・リューベンも出てきて、なんだなんだと思ってたら、これが新しいアルバムの製作風景だったのですた。

で、その曲の歌詞が、やはりブッシュ発言問題に対する解答みたいな内容になっていて、ああ、本人たちにその気がなくても、結局まわりに「政治的な発言だ」と受け取られてからは、政治的な曲を書くハメになるのだなあ、と思いました。ナタリーが「好むと好まざるとに関わらず、今チックスはそういうバンド(言論の自由の象徴)になってしまった」と言っているように。

そもそもさあ、「アメリカ大統領が私と同じテキサス出身なのを恥ずかしく思う」って、政治的発言なのかよ。こんなの、普通の人が街角や職場や家庭でしている会話と変わらないじゃない。それをことさら取り立ててぎゃあぎゃあ言う右翼系の人たちの頭の堅さ、違う意見を受け入れない閉鎖性。アメリカって開放的で自由な国じゃなかったの?

特にムカついたのが、このDVDの題名になっている「Shut up and sing」と実際に言ったLaura Ingrahamというコメンテーター。ミュージシャンは自分の意見を言わず、ただ歌だけ歌ってろってこと?私は個人的に、余り音楽が政治的になるのは好きじゃないのですが、ミュージシャンとかがが政治のことに口出すな、ってのはどうよ。こういう公の人たちが率直に自分の意見を言えて、それを聞いた一般の人たちが常に政治や社会問題を身近に感じられるのが民主主義の国ってもんじゃないですか。しかもこのコメンテーターはさらに、「言論の自由ってのは、公共の場でやってはいけない」って言ったそうです。そういうのをファシズムって言うんじゃないの?!自分で言ってることわかってんのかね、この人。

でもね、このDVDの教訓はね、「言論の自由と言うのは保証されているものではない。勝ち取るものだ」と思いましたね。ブッシュがこの件について、

言論の自由は2ウェイ・ストリートだ。言いたいことを言って、だからお前らのCDを買わない、というのも自由だ」

と言うんだけど、まさにその通りなんだよね。言論の自由を貫くことによって仕事を失ったり、殺されたり、色々な犠牲を払うかもしれない。ディキシー・チックスは、そんなつもりは毛頭もなく発言しちゃったわけなんですが、戦わなきゃならない、と決めた後は潔く戦った。そこが偉いと思ったね。自分が言ったことは、失礼だったかもしれないけど間違っているとは思わないし、あの程度の発言で、私たちの音楽をボイコットしたりする方がおかしい、という姿勢を曲げなかった。

しかも、問題発言をしたロンドンの同じ会場で再びコンサートを開いた2006年だったかな、言うんだよ。

「犯罪現場に戻って来たわ・・・何を言おうかしら、とか全く考えてこなかったのだけど、やっぱりアメリカ大統領が私と同じテキサス出身なのを恥ずかしいと思うって言っちゃおうっと!」

だって!もーすごいコイツ。お客さんも拍手喝采していました。

そして新しいアルバムは2007年のグラミー賞で5部門受賞。マーティがバンド辞める必要なくなって良かった!と思ったけど、本当に素晴らしいのは、アメリカはまだ大丈夫だ、良心的な人たちがたくさんいる、って思えたことだよね。本当にあのままチックスが闇に葬り去られていたら、この国に対する不信感がどんどん募るところだった。だって、ブッシュ一家が石油のために戦争起こしちゃえるんだから、アメリカがサウジやアフガンみたいに、一部の王侯貴族だけめちゃくちゃ裕福で、他の99%の人民が奴隷のように扱われている、なんて国にならないとは言い切れないんだよ。だから言論の自由って大事だし、普通の人々が政治に関心を持つって言うのも大事だと思う。その両方のために戦ったチックスこそが本当の愛国者だよ。

key Word
映画 ディキシー・チックス ブッシュ カントリー 言論の自由
考えさせられた映画 | コメント(1) | 【2008/07/27 01:35】
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夏の野外コンサート~クルーフェスト 2008
Cruefest 2008 @ DTE Energy Music Theatre, Michigan July 15th, 2008

このクソ暑いのに野外コンサートかよ。しかも芝生席だ。チケット買ったのは何ヶ月も前だったので、炎天下に外に出るんだ、なんて思ってもみなかった。あー行きたくない。このトシでフェストなんて身体もたねーよ。参加バンドもちらっとチューブしてみたけど、変なオルタナみたいなバンドだし。ぶつぶつぶつぶつ。

会場になったDTE Energy Music Theatreは別名Pine Knobと呼ばれ、ミシガンでは超有名な野外コンサートの会場で、一度行ってみたかったのですが、まー遠い遠い。White Trash(白人貧民)の住宅地を

「KKKとか住んでたらどうしよう~!殺される~」

とかマジ心配しながらなんとか通り抜け、くねくねした山道みたいなところを延々走り、隣の州まで繋がってそうな馬鹿でかい道路に出てしばらく走り、今度は小さな片側1車線の道に入って、「Pine Knob」と看板が掲げてあった道は舗装されてないよ!

ぜってえコレじゃねえだろう、と思って、キッス・ファンのボスに電話してみる。

「ねえ、パイン・ノブってダート・ロード(舗装されてない道)なんだけどさー、ここ曲がっていいの?」

Cruefest
「あーそれそれ、それでいいの。何見に行くの?」

モトリー・クルー

「ぎゃはははは!お前って面白いヤツだなあ!」

またウケてしまった。うちの上司は面白い。

やっと車を止め、会場の入り口まで異常に遠く、炎天下テクテクと歩いているだけで疲れる。あーうちに帰りたい。入り口でかばんの中チェック、ボディ・タッチでしっかりケツの割れ目までチェックされて中に入ってみると、

なんだこりゃ、ディズニー・ランド?!

小さな小路の両脇は、人工の噴水やアマゾンの密林みたいな茂み。さらに階段を上がって行くと、フード・コートがあり、いろんなメシ屋やビア・スタンド・・・・・

さらに上り坂をテクテク歩いて、やっと会場にたどり着いた。な、長い・・・・。

30分くらいしか遅刻していないのに、最近のライブはみんな時間通りに始まる。出演バンドはパパローチバックチェリートラプトシックスAM、そしてモトリー・クルー。最近のバンド全然わかんないので、誰が一番に演るのか全くわからなかったのだが、なんとシックスAMだった。あら~ニッキーのバンド始まっちゃってるじゃん!とか思って、ビールも買わずにとりあえず芝生の空いているところに座って見る。

客はまー、いままで行ったどのライブよりも、白人貧民が多かった。ジャンク・フードばっかり食ってそうなぶよぶよデブの白人とか、すっげー太ってんのにピチピチのタンクトップとか着ちゃう自意識ゼロの汚らしい女の子たちとか、想像つきます?!モトリー・クルーのファンって、本当にそういう層なんだよね。後はまあ当時のモトリー・ファンの成れの果て、参加バンドの若いファンなど、新旧入り乱れまくってましたが、基本的にホワイト・トラッシュ~って感じ。

シックスAMは、めっちゃつまんなかった。遠かったからはっきり見えなかったけど、ニッキーなんかかっこ悪いなあ、そっくりさんかよ?!って感じ。ステージ・アクションらしきものはないし、曲は印象薄いし。ボーカルが曲紹介で、

「これは『ヘロイン・ダイアリー』というアルバムからの曲で・・・・」

とかなんとか言ってたんだけど、モトリーの自叙伝のタイトルも『Dirt』だったりとか、ニッキーってナルだなーと思った。

こんな・・・・自堕落なオレ・・・・オレってかっこいい・・・・

みたいな感じでした。はい。

シックスAMが終わるまで待てずに、ビール買いに行く。今年はミシガン、例年になく雨が多いのだが、この日は晴天で、超暑い。なんか飲ませろ!

最近はビールもクレジット・カードで買えてしまって、わざわざ現金用意してくるまでもなかった。今度は違うサイドの芝生に腰を下ろし、持参してきた帽子をかぶり、サングラスをかけ、本を読み始める。馬鹿でかいカップになみなみと注がれたビールがもう半分くらいない。うめえ!とか思ってるうちにすっかり回ってきて、周りにはタバコを吸っている人がたくさん・・・・・

ああ~よせばいいのにもらいにいっちゃった。1ドルで売ってくれ、って言いたいんだけど、酔っ払ってて変な英語になってしまう

「Can I buy me a cigarretts?」

違う!違う~!

「Can I buy a cigarrett from you?」

だろ~お前何年アメリカ住んでんだよ~とか思いながら、お姉さんが「いいわよ、あげるわよ」とくれたので、ヒッピーのような帽子をかぶってグラサンして、酔っ払いにしかできないあの「ニカッ」というスマイルを返してしまう。

とかやってる内にトラプトが始まる。若い子たちは結構騒いでたんで、それなりに人気あるみたいだね。一応最後までみたのだが、帽子暑くて、かぶっているのに絶えられそうもないので日陰に行くことにした。

カシューナッツのハニーローストとかぽりぽり食いながら日陰で小一時間も休んだ後、また炎天下の芝生席に帰る。すでにパパローチは終わりバックチェリーが始まっていて、この後モトリーだから、これ以上ウロウロしてもいられない。しょーがなくステージをぼーっと見ていただけなのだが、このバックチェリーが結構面白い。なんか、結構80年代引きずってる感じの曲調に思えるのだが、一応90年代、00年代も入ってるというか、なかなか良くバランスとれたバンドだ。ボーカルの声がいいし、この子がものすごくエネルギッシュにぴょんぴょん飛び回るのが楽しい。私的には、初期の頃のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのボーカルを思い出させた。

で、結構楽しんでいると、右手前方に芝生に座って本を読んでる男一名発見。本を持って一人で来てるのなんてアタシしかいないよ!と思ってたから、すごい親近感感じる。この人、この炎天下に黒尽くめで、黒いDr.マーチン履いてるし。顔見たら結構いい男で、しかも長髪っじゃん!なんでこんなヤツが一人できてるんだろう?!とヒッジョーに気になる。しかもコイツの黒のパンツは、『ブラック』で売ってたかのようなジッパーがたくさんついた代物!こんなやつがモトリー見に来たのか?

とか妄想してたら、バックチェリーが最後の曲らしい。『クレイジー・ビッチ』というとんでもないタイトルの曲なのだが、

クレイジー、クレイジー、ビッチ!

と連発するのがもー爆笑で、曲もすっごく良くてノッってしまった。曲の途中でボーカルの見せ場があって、もうなんて言ったかうろ覚えなんだけど、

「みんな色々しなくちゃいけないことはあるが、procrastinateする・・・」

とかなんとか言って、procrastinateなんて言葉がいきなり出てくるとちょっと「おおっ」とか思うじゃん?そういう余りロック・コンサートで聞かないような言葉を何個か放り込んだあとおもむろに

「クレイジ~~~~~!!!!!ビッチ!!!!!くれいじ~~~~びっち!!!!」

って叫び始めて、もーサイコー可笑しい!!なんか周りとか気にせずゲラゲラ笑ってしまった。「アルバム買わなきゃ」とか心に決める。

バックチェリーが終わると、隣のお姉さんが話しかけてくる。ステージ両脇についている大スクリーンで、デジタルアニメのニルバーナが歌っているのを見て、

「ああ、あれね、『ロックバンド』っていうゲームなのよ、アタシ得意なの!ニルバーナ歌って90点取ったんだから」

とかいやにフレンドリーな人だなあ。この人もタバコ吸ってたので、また貰ってしまった。今回も変な英語になっっちゃったよう。日射病か?!

ステージは、モトリーのセッティングをしているのだが、垂れ幕かけちゃって念入りにやっている。そんなすごいセットなのか。先ほどのいい男はまだ本を読んでいる。こんだけ前座バンドに無関心なんだから、モトリーのファンなんだろうなあ、などと興味は尽きない。

AC/DCの『バック・イン・ブラック』が流れてきた。去年の夏、ヴィンス・ニール観に行ったとき、開演の直前に『Those About To Rock We Salute You』が丸々一曲かかったので、ああ、多分この曲が終わったら始まるのだな、長かったな~ここまでの道のり・・・・・なんて思っていたら時間はもう9時過ぎで、風がそよそよと心地いい。遠い西の空に太陽が沈んだばっかりで、あたりはほのかに明るい。黒い垂れ幕の向こうからデビルとかの幻想的な影絵でミニ・シアター風な、結構凝っったオープニングだ・・・・と思ってたらギターの音が

ぶぃ~~~~~ん、ぶぃ~~~~~~ん

と、『キックスタート』のオープニングに違いないのだが、あんまり引っ張るのでやっぱり違うかな、なんてやってたらさっきのイケメン黒尽くめが本をかばんにしまって立ち上がった。

やっぱモトリーのファンなのか!

と思ってたら1曲目はやっぱり『キックスタート・マイハート』だ!私の一番のお気に入りをしょっぱなにかましてくれるのか!一人で来てても頭のてっぺんから

ぎゃあああああああー!!!と叫んでしまった。

ヴィンス、かっこいい~!一時よりやせたじゃん!ステージアクションがモスクワの頃から変わってなくて、イジョーにかっこいい。広いステージを縦横無尽に走り回って、全然広さを感じさせない。ニッキーは、シックスAMでは全然カッコ良くなかったのに、なんでモトリーだとかっこいいんだよ~!やってること変わんないんだけどな~なんて思って見上げると、オヤジがスクリーンに映ってる。オヤジはドクロマークの山高帽に、ロングコートかなんか着てたけど、あのモンスター系の顔に良く合ってて、今の方がカッコ良くなったんじゃないのあんた、とか思った。他のメンバーがトシ取って来て、オヤジのレベルに落ちつつあるのかもしれないけど。

トミーは相変わらずひょろひょろで、短髪にして帽子なんか被っていたが、やっぱ太らない人は得だなー。老けてもかっこいいもんな。

で、いきなり2曲目は『ワイルド・サイド』続けて『ライブ・ワイヤー』と完全に同窓会ライブにするつもりか!やった~!と喜んでいたら、新譜から『セイント・オブ・ロサンジェリーズ』をお披露目。CDは今一好きじゃなかったけど、ライブで聴くには悪い曲じゃなかった。しかし、客は明らかに昔の曲を期待していて、一瞬空気が緩むのはいなめませんでした。

で、トミー・リーが立ち上がって、今日はライブ・ビデオの撮影をしてるから、映るように手を上げたりちんちん出したりしな!ってのを聞いて、一人で「トミー、バカ~」とかゲラゲラ笑ってたら、さっきのイケメン黒尽くめがくるっと振り向いて、「こっちこっち」と手招きしているぞ!

アタシ?!

『Same Ol' Situation』をバックに聴きながら側に行ってみると彼は

「今日はボスにクライアントを連れて行けって言われて来ただけなんだけど、どうせだったら可愛い女の子と一緒にコンサートを見たいと思ったんだ」

だって。女の子(girl)なんて言われると、詐欺してるみたいでやなんだけど、こっちってgirlって結構年齢に関係なく使うからま、別に言い訳とかしなくてもいいか、とか一人で正当化しつつ、クライアント連れてきたって、接待かよ?こんなかっこして?どんな商売だ?

その後はコイツとしゃべってたりしててあんまり聴いてなかったんだけど、『ルックス・ザット・キル』『ガールズ・ガールズ・ガールズ』『ドント・ゴー・アウェイ・マッド』とか、お約束出まくり。もう一曲、新譜からの曲を演っったのだけど、どれだかわかんない。あ!あと意外なところで『アナーキー in UK』とか演って思いっきりハズしてたな。私はモトリー・バージョンのこの曲、ピストルズより好きなんだけど、他の客は今一感動してなかった。あと『プライマル・スクリーム』も、私的には結構ツボだったのだけど、今一ウケなかった。他に、『ドクター・フィールグッド』以降に出た有象無象のアルバムからも一曲くらい演ったのかも知れないけど、アルバム聴いてないので全くrecognize出来ませんでした。

「あんた、モトリーのファンってタイプじゃないけど、本当はどんな音楽が好きなの」

と聞くとイケメン黒尽くめは、

「僕はドラマーだから、メタルも聞くけど、アフリカン・ミュージックとか太鼓とかも聴くよ」

・・・あのさあ、日本人だからって、太鼓とか出さなくていいよー。この「日本文化少し精通しています」みたいのもういいです。アメリカ来たばっかの頃は、英語も今一出来ないし、日本のこと話したりするの楽しかったけど、今もう12年もアメリカに住んでるしさー、ぶっちゃけ日本人だからって太鼓とか興味ねーよ!

「でも、基本的に僕はモトリーを聴いて育ったんだよ!トミー・リーはやっぱすごいドラマーだと思う。トミーから学ぶことはいっぱいあったよ」

なんだあんた、結構話わかるじゃん!

「Dr.フィールグッドが聴きたいな」

というので、

「あ、それはトリだよ」

と言ったら、

「なんでわかるの?」

だって。

ファンなんだよ!モトリーのコンサート、これで4回目だぜ!去年のヴィンスも数えたら5回も観てるんだぜ!東京2回、デトロイト2回だ!

で、案の定Dr.フィールグッドはトリだったが、ヘッドバンギングしている私を尻目に、イケメン黒尽くめはノートを取り出して、何かさかさか書いている。

電話番号だ!

今時クラッシックだなあ~。電話番号紙に書いて、くれるのか。じゃあマジ彼女いないんだな。こんなイケメンなのに女いないなんて、なんか人間性に問題あるに違いないな。電話番号なんか用意してるってことは、急いでるのかと思い、

「なに、もう帰らなきゃいけないの?」

と言ったら、

「なんで?もう終わりなの?」

と彼が言ったところで、モトリーがアンコールに登場。『ホーム・スィート・ホーム』だ!

トミーのピアノが聴こえて来たとき、「おーまいがー!!!」と叫んでしまった。ヴィンスのコンサートではこの曲演らなかったので、今日聴けるとは思ってなかったのよ。

曲の間中、大スクリーンには、メンバーの高校のアルバムからの写真とか(あ、オヤジはなしね)、デヴューしたばっかの時とか、『ライブ・ワイヤー』でニッキーがブーツに火を付けるところ、『ルックス・ザット・キル』のPV(むちゃくちゃかっこいい)、なんかが映し出されていて、もう思いっきりノスタルジーに浸っている。こういうところがモトリーって、というかニッキー・シックスって露骨過ぎて恥ずかしくなっちゃうんだけど、『ホーム・スィート・ホーム』をバックにコレやられるとこっちも一緒に浸るしかない。

『ホーム・・・・』が終わるとイケメン黒尽くしは、電話番号をくれた。その後色々しゃべっていたら、コイツはジャーニーもサバイバーも好きと言うことが発覚!

「サバイバーかよ!」

と思いっきり言って、めちゃくちゃ空気が重くなったりしながら駐車場まで行って、バイバイする。

既に12AM、ハイウェイの入り口近くはコンサートから帰る人で大渋滞。いやだいやだといいながら、結構楽しかったな。、ナンパもされたし、新しいバンドも発掘できたしな。バックチェリーは要チェックだ。モトリーもがんばってたし。でもコンサートを一晩引っ張るエネルギーはさすがになかったな。最初の5曲くらいが一番良かった・・・・・とか考えてるうちにハイウェイに乗れて、80マイルでぶっ飛ばしながら、最近ハマっているボン・ジョヴィの『Slippery When Wet』を爆音でかけて、『リビング・オン・ザ・プレイヤー』を大声で歌いながら帰ってきました。

Key Words
音楽 ロック メタル ライブ モトリー・クルー トラプト パパローチ バックチェリー シックスAM クルーフェスト
LIVE、イベント | コメント(11) | 【2008/07/20 02:53】
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『愛についてのキンゼイ・レポート』-セックス・ドクターの伝記映画
Kinsey

ローラ・リニーが目当てで借りたのですが、主人公のキンゼイ役がリーアム・ニーソンってのはもうけでした。本物のキンゼイさんと同じ髪型をしてがんばってました。ほとんどの人は知っていると思うけど、キンゼイさんて人は、初めてセックスを科学的に調査・研究し、『キンゼイ・レポート』なるものを世の中に発表した人で、この映画はその人の伝記映画です。

愛についてのキンゼイ・レポート
dvd on amazon.com
Produced: 2004
Director: Bill Condon
Writing Credits: Bill Condon
Cast:
Alfred Kinsey: Liam Neeson
Clara McMillen
Clyde Martin: Peter Sarsgaard
Alfred Seguine Kinsey: John Lithgow
Thurman Rice: Tim Curry
Herman Wells: Oliver Platt
昔は「キンゼイ・レポート、ぐふっ」って、やらしー捉え方しかしていなかったのですが、この映画を観てキンゼイさんが調査を始めた1940年、50年あたりの空気を考えると、すごいことだったのだなと思います。宗教の影響が非常に大きく、公共の場で性を語ることさえタブーなような時代にセックスの実態調査をしたのですからねえ。

キンゼイさんは自分が結婚した際に性生活に問題があり、専門家に受けたアドヴァイスのおかげで問題が解消されたため、他の悩める人たちもざっくばらんに話し合える場があればと、今までセックスのマイナス面ばかりを強調したクラスではなく、セックスに関する真実を教えるクラスを作りたいと思う。あ、キンゼイさんは、動物学の教授としてインディアナ大学に勤務していたのですが。

で、キンゼイさんが「セックス・ドクター」として大学内で有名になってくると、性の悩みを持つ学生たちが相談にくるようになるのですが、この学生たちが信じているたわごとを私も子供の頃聞いたことがあって、結構最近なんだな性が開放されたのって、とか思いました。例えば、

ハイヒールを履きすぎると、不妊症になる
性欲を押さえ込むとどもりになる
口笛を吹くと梅毒になりやすい
オナニーし過ぎると早漏になる

などなど、聞いたことない?小学校高学年の頃、こういうことがまことしやかに話題になった気がするのですが。そうでなくても、女のオナニーは乳首が黒くなるとか、色々、「性的なことは悪いことだ」というような風潮は、私が小さいときはまだありましたもんね。

こういう誤解とかウワサとかは、性についておおっぴらに語れないので、真実を知る由もなく一人歩きして行っちゃう、と感じたキンゼイさんは、自分のクラスに集まってくれた学生たちに、自分たちのセックス・ライフについてのアンケートに答えさせる。そして、自らゲイバーに出向いて、当時異端者扱いされていたホモセクシャルの人たちにもインタヴューして回る。

で、キンゼイさんは自分自身がバイ・セクシャルだったということを発見してしまう。一緒にゲイバーめぐりした学生のクライドと、宿泊先のホテルで☆体験☆してしまうのですが、クライド役のピーター・サースガードがやたらフルチンでホテル・ルームを歩き回るので、

もうけた、もうけた

と思っていたら、クライドがキンゼイさんを誘惑し始めるのよね。あら?で、キンゼイさんは抗らうことが出来ずに、二人はものすご濃密なキスをするのですが。

こういうシーンを観ると、またもや『ブロークバック・マウンテン』てなんでそんなに騒がれたのかと思う。まあ、この映画では男同士のセックス・シーンはないけど、『太陽と月に背いて』ではモロやってたもんなあ。やっぱ、カウボーイが同性愛、というところが保守的なアメリカ人のカンに触ったのだな。そうとしか思えない。

とにかく、自分がバイであることを知ったキンゼイさんは、本当に愛している奥さんのマックに正直に告白するのですが、マックはキンゼイさんを愛しているがために深く傷つく。キンゼイさんは、今の結婚制度は人間の自然な欲求に則していない、という結論に達し、キンゼイさんとマックとクライドは、奇妙な三角関係を続けることになる。そして、ある日クライドは、マックともセックスしたいと言う。マックは「私もクライドとしたい」と言い、自分がしたのにダメとは言えないキンゼイさん。こうして三角関係はますます奇妙になって行く。

この三角関係のエピソードは、ウィキとかでは「と言われている」って感じで、真実だったかどうかははっきりしないのですが、キンゼイさんが自宅で学生たちにセックスさせてフィルムに撮ったり、ということは本当に行っていたらしい。あくまで研究としてで、下世話な理由ではないようですが、当時はかなり変人と思われていたようです。

いや~、キンゼイさんってのは興味深い人だったようですね。でもこの映画で使われているネタは、他人が書いたキンゼイさんの人となりとかウワサとかも含まれているようなので、全部鵜呑みにしちゃいけないみたいですけどね。映画としては、キンゼイさんはセックスで悩んでいる人を純粋に助けたいと研究を始めた、というスタンスですが、人によってはキンゼイさんは性に対してかなり変わった嗜好をもっており、それを正当化するためにかなりバイアスのかかった研究をした、と言う人もいるようです。

ま、でも、本人の動機がどうあったにせよ、性について堂々と語っていいのだ、としたことと、たくさんの人の性生活を調査して公開したことにより、自分は異常なんじゃないか、と密かに悩んでいた人たちを安堵させたというのは素晴らしい功績だと思いますね。映画の中でも、ある女性がキンゼイさんにこんな話をします。

子供が大きくなったので働きに出るようになったら、一緒に働いている女性に恋してしまった。こんな気持ちになったことはなかったのだけど、自分はおかしいと思い、気持ちを抑えてきた。そのためにアルコール中毒になり、夫には離婚され、一文無しになった・・・・・でも、あなたの本を読んで、レズビアンは異常じゃないと思えたので、正直に告白してみたら、相手の女性も私のことを思ってくれていた。彼女と一緒になって3年になるけど、生涯で最高のときを過ごしている。

と言って、キンゼイさんと握手をします(ハグだったかな?)。なんか、このシーンはジーンときちゃいました。普通、誰かを好きになったらウキウキするものだけど、逆に悩んじゃうというのはかなり辛かっただろうなあと思って。

邦題の『愛についてのキンゼイ・レポート』・・・・。これは名邦題なのかコケたのか、良くわかりませんね。というのは映画の中で「愛について研究する気はないのですか」と聞かれたキンゼイさんが、「愛は数字にできない。数字に出来ないものは科学的に扱えないのだ」と言うくだりがあるので、それをそのまま受け取れば、「こんなはっきり愛じゃない、と言っているのに、この邦題・・・・ちゃんと映画観たの?」ということになります。DVDのカバーも、アメリカ版はキンゼイが文字の中に立っているショットだけで、奥さんとベッドに入っている写真は使われてなくて、キンゼイがどういう研究をしたか、というストーリーに重きを置いているように見受けられます。

日本ではとかくほのぼのラブ・ストーリーにしたがる傾向ありますよね。そういうのが受けるんでしょうね。でも、この映画に関して言えば、映画のスタンス自体がキンゼイを善意の人と描きたいがために、奥さんとの間の愛と絆みたいなものを強調しているので、あながち間違った邦題でもないかなと。どちらにせよ、原題の『Kinsey』よりはずっと魅力的なタイトルだと思います。

key Word
映画 愛についてのキンゼイ・レポート ビル・コンドン リーアム・ニーソン ローラ・リニー ピーター・サースガード ジョン・リスゴー ティム・カリー
映画を見て、思ったこと | コメント(6) | 【2008/07/14 07:29】
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『テネイシャスD 運命のピックをさがせ!』-漢による漢のためのロック・ミュージカル
Tenacious D in The Pick of Destiny

バカだ・・・・なんてバカなんだ。ロックのマスター・ピースを書くために、伝説のピックを手に入れようとする、デブでぶさいくな二人のハードロッカー・・・・・伝説のピックは悪魔の牙から出来ていて、悪魔もそれを取り戻そうと追っかけてくる・・・・・

>Tenacious D
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Produced: 2006
Director: Liam Lynch
Writing Credits: Jack Black, Kyle Gass
Cast:
JB: Jack Black
KG: Kyle Gass
Dio: Ronnie James Dio
Waitress: Amy Poeler
The Stranger: Tim Robbins
Satan: Dave Grohl
Guiter Center Guy: Ban Stiller
Bud Black: Meat Loaf
Sasquatch: John C. Reilly
今回しみじみジャック・ブラックって感性合わねーなと思ったのですが、なにがイヤかって、デブねたが多過ぎるんだよ。『ナチョ・リブレ』でも散々言っちゃったけどさ、デブのガキを連れてきて面白可笑しく撮るのとか、私には哀れにしか見えない、要するに面白くないのよね。今回も、冒頭に出てきたジャック・ブラックの子供のときのキャラとか、ジャック・ブラックとコンビを組む、デブで不細工でトシで、しかも金ないKGとか、なんだかなー。

でもKGはむちゃくちゃギターが上手いという設定なんだけど、アタシ、ああいうクラッシクがベースのギターとかってちっともいいと思わないのよね。ジャック・ブラックってすっごいロックとか好きなのはいいなと思うんだけど、この人の趣味ってヲタクというか、本当に一昔前のロック、そうねえ、ハートが『バラクーダ』とか演ってた頃の、デジタル前の、もっさりした、垢抜けない、やたら劇的な、一言でいうとだっさいロックなのよね。

もちろん、そういうものの中にもいいものはあるよ。出演もしてるディオなんて、その最たるもんよね。もっさりして、垢抜けなくて、劇的で恥ずかしくて、禿でオヤジ顔でがに股で、だっさいロックなんだけど、ちょおおおおおカッコいい。

でもこの人たちの世界って、セックス・アピール無さ過ぎなんだよ。本当に男の世界、男のギャグ、うんこネタ、屁ネタ、禿げ、デブネタ、魔界だの様式美だの、精液くせーよ!って感じで。なんかさー、私が「カッコいい~」とか思っているロック・ミュージシャンも、一皮剥けばこうなんだろうなあと思うと、男性不信に陥りそう。自分の愛した男がこの映画観て、本当に楽しそうにウケていたら、もうセックスできないよー!って感じ?

でも、オールスターなのよね、この映画ジャック・ブラックがラリって見る夢でゴリラみたいな(もしかしたら、アメ人は知ってるなんかのキャラ?)動物の役がジョン・C・ライリーでしょ。あと、こういうの結構ノン・クレジットで出るの好きなティム・ロビンズがホームレスのオヤジの役(好きだよなー、この人、と思ったら、ジャック・ブラックとUCLAの演劇部で一緒だったんだそうです)、気が付かなかったけど悪魔の役がディヴ・グロール、ダイナーのスレたウェイトレスが、『俺達フィギュア・スケーター』で抜群に可笑しかったエイミー・ポーラー(この人最高)、あと、ジャック・ブラックのお父さん役がミートローフだっとりとか。

一番気に入ったキャラは、ベン・スティラー演じる、ギター・センターの店員。長髪なんだけどちりちりで、薄くて、すっげーかっこ悪くて、トシで、目つき悪い!「もうやめろよ、長髪!」って感じの、こういう人、いつの時代になってもいなくならないなー、という。老眼鏡かけてんだぜ!で、この人が実は、エディ・ヴァンヘイレン、アンガス・ヤング、あと誰だっけ?がみんな使ってた、というピックの「伝説」を解き明かすことに人生かけて、いい年こいてまだギター・センターでバイトしているという素晴らしいキャラです。ベン・スティラー、最高に上手い!

あ!そいでこの映画、ロック・ミュージカルなんだよね。それがまた萎えるんだ。しかも、マスター・ピースを書きたい理由ってのが、地元の小さなバーのコンテストで優勝して、賞金でアパートの家賃を払うためという小ささ・・・・・。ピックをめぐって悪魔と対決、ピックは取られてしまうが、代わりに悪魔の角を手に入れる。で、その角で作ったマリファナ・パイプでハイになる二人で映画は終わってしまう・・・・・

最後有名になるわけでもなく、金持ちになるわけでもなく、マスター・ピースも書けず、ぶっちゃけコンテストにも勝ってないと思うのですが(もう憶えてねーよ)、ここまで行き場がないと、却ってすがすがしいけどね。ベタなお約束の「ださいヤツでも、やれば出来る」的なエンディングにしなかったところはなかなか考えてると思う。色々文句言いつつ結構きちんと観ちまったな。

ジャック・ブラックの出演作品一覧

key Word
映画 テネイシャスD 運命のピックをさがせ!リアム・リンチ ジャック・ブラック カイル・ガス ベン・スティラー ロニー・ジェイムス・ディオ エイミー・ポーラー ティム・ロビンス デイヴ・グロール ミート・ローフ ジョン・C・ライリー
ミニシアター系 | コメント(7) | 【2008/07/14 02:31】
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『ハピネス』-ポジティヴな姿勢を批判?
Happiness

レストランでのデートシーンから始まるこの映画。デートしている男女は普通の、どっちかというと冴えないカップル。しかも、楽しくデートしているのではなく、女の方が別れようとしている。言葉を選んで話しているのですが、男に「お前はクソだ。俺がクソなんじゃない。お前は死ぬまでクソだ」と逆ギレされてしまう。

hapiness
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Produced: 1998
Director: Todd Solondz
Writing Credits: Todd Solondz
Cast:
Joy: Jane Adams
Allen: Phillip Seymour Hoffman
Dr. Maplewood: Dylan Baker
Helen: Lara Flynn Boyle
Trish: Vynthia Stevenson
Billy: Rufus Read
Kristina: Camryn Manheim
この女の人が、『リトル・チルドレン』で、性的異常者・レニーとデートするあの暗い女の人を演じた、ジェーン・アダムスなんですよ。もう、あのまんまです。『リトル・チルドレン』観た人なら、このキャラの行き場のなさが良くわかってくれると思います。

このシーンのすぐあとが、フィリップ・シーモア・ホフマン演じるアレンのセラピーのシーンで、アレンが

「あの女を・・・・犯して・・・・ひっくり返してもっと犯して・・・・そんなことばっかり考えている・・・・」

ってシーンなんですから、『ハピネス』というタイトルがいかに皮肉かってのがわかってもらえるかと思います。

マグノリア』を彷彿とさせる群像劇なんですが、救いのなさが『ハピネス』の特徴ですかね。英語ではこういうの良くDisturbingと言われますね。辞書では「心をかき乱す」とか訳されてますが、「カンに触る」「神経に障る」「いや~な気分になる」って感じですかね。

で、アレンの精神科医のドクター・メイプルウッドは、お金もあって、幸せな結婚生活を営んでいるように見えるんですけど、じつは小さい男の子を犯したくて、日夜悶々としている。その妻はなーんにも考えていない、アメリカの典型的な中産階級、その妹が冒頭で男と別れようとして罵倒されたジョイ、もう一人の妹のヘレンは、人気作家ですっごい美人で男は遊び放題で、アレンが妄想しているのはこの人、という設定。

とにかく、最後に幸せになる人がいないんですけど、完全に100%不幸になる人もいないんですよ。要するに何も変わらない!これって一番disturbingですよね。群像劇ではありますが、一応、ジョイが主人公みたいなんですけど、この人ホント、なんでこんな運が悪いの?!って感じよ。

冒頭、男を振ってるんですけど、普段は振られてばかりみたいで、お姉さんたちは家庭と仕事で成功しているのに、自分は両方だめ。ミュージシャンなんだけど、全く才能なくてそっちは全然ダメだし、行き先のないテレ・マーケティングの仕事を辞めて、亡命してきた外国人に英語を教える仕事を始めるんですけど、生徒に全然好かれないという、こういう人、本当にいるんだろうか?!って感じです。

で、フィリップ・シーモア・ホフマンも、お得意のデブで冴えない変態を演じてるんですけど、いたずら電話してマスかく、という超悲しい、危ない男です。で、隣に住んでる、美女で人気作家のヘレンに恋しているんですけど、このヘレンは『ツイン・ピークス』でドナ役を演じた、トラディショナルな美人(一般には『オースティン・パワー』の方が有名かもね)のララ・フリン・ボイルで、なんでこんなどうにもならない女に惹かれるんだよ!とイライラするのですが、結構釣り合うデブでブスのクリスティーナにやっと落ち着いたかと思ったら、クリスティーナは、自分をレイプしたアパートのドアマンを殺してバラバラにしていたという・・・・・もう、とほほでしょ?

小児性愛者のドクター・メイプルウッドは、可愛い男の子を犯す妄想ばっかり見てるんですけど、息子がちょうどその歳で、息子の友達を犯っちゃうんですよ!息子が話す友達のことを妄想するみたいで、がまんできなくなって犯りに行っちゃったり、ちょっとカマっぽい男の子がお泊りに来たとき、睡眠薬で眠らせて犯したりしてる。あーあ。で、学校で噂になって、息子が「パパ、本当にやったの?」と聞くと、「イエス」って言うんですけど、このとき息子が泣くんですね。これが可哀想ですねー。自分の父親は変態なんですよ。小児性愛を変態よばわりしていいかはわかりませんが、少なくともこの人たちにとっては変態で、お父さん自身が自分をおかしいと思ってるんですから。行き場がありません。

考えてみれば、『リトル・チルドレン』でも、小児性愛者が出てきましたよね。小児性愛者って、本当に行き場ないですよね。子供がいたずらされるのは可哀想なんですけど、子供しか愛せないって人も悲劇ですよね。このお父さんは、なんとか自分の性欲を抑えようとしてるんだけど出来ないみたいで、そうなっちゃうともう社会に受け入れられないんですもんね。

まー要するに何が言いたいかって言うと、多分、アメリカの"Go-Getter"、目標に向かって常に前進する、とか、がんばれば何でも手に入る、みたいな非常にポジティヴな姿勢に疑問を投げかけているのだと思います。手に入らないものはわんさとあるし、生まれついて持っているものは変えられない。ブスでデブに生まれてきたら、ブスでデブなんだよ!という。

こういう思想はネガティヴとされていますが、私はそうじゃないと思うんですね。というのは、「誰でも幸せになれる」と思うから、幸せになれないと不幸に感じるのであって、「自分の人生はこんなもんよ」と最初から肯定した方が、幸せじゃなくても、ストレス感じて、頭オカシクなったりはしないですよね。

ダイエットってのが一番いい例じゃないですか?みんな努力すれば、モデルみたいにきれいになれる、と思うから食べないで我慢したりする。また、努力でどうにでもなるものだ、という考えがあるから、デブの人は「努力しない人」とみなされ、バカにされる。でも、現実にモデルみたいな体型になれる人は全体の10%くらいしかいなくて、だから10代の女の子たちが拒食症で死んで行くんじゃありませんか。

だから、結局、この映画に出てくるいわゆる「Loser(落ちこぼれ)」を生んだのは、一見良いことに見える「ポジティヴ・シンキング」や上昇志向で、人間ってのは多少だら~と生きてる方が幸せなんだよ、と言ってるんじゃないでしょうかね。私はそれ、賛成ですが。

key Word
映画 ハピネス トッド・ソロンズ ジェーン・アダムス ララ・フリン・ボイル シンシア・スティーヴンソン フィリップ・シーモア・ホフマン
映画レビュー | コメント(3) | 【2008/07/07 00:40】
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『ラスト、コーション』-じと~っとしているところがステキです
Lust, Caution

エッチ・シーンがすごい!と言われていたのでスケベ心で観たのですが・・・・。私はもう少し

ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!

と景気のいいエッチが好きなので、この、トニー・レオンが腰を

むにっ むにっ

と動かしながらねちねち攻めるセックスは、エロ度からするとイマイチなんですけど、まあ、そんなことはいいとして。

Lust, Caution
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Produced: 2007
Director: Ang Lee
Writing Credits: Eileen Chang, James Schamus
Cast:
Mr. Yee: Tony Leung Chiu Wai
Wong Chia Chi: Wei Tang
Yee Tai Tai: Joan Chen
Kuang Yu Min: Lee-Hom Wang
Tsao: Lar Lok Chin
濡れ場とか裸って、客寄せのためだけ、ってこともあって、良く女優が

「必然性のないものは演ません」

とかって言ったりするんですけど、『ラスト、コーション』の濡れ場は、必然性どころか、すごい多くを語ってるんですよね。2人の男女がいい感じになって、

「あ、こいつらやっちゃったんだな」

とわかればいいんじゃなくて、どういうセックスをしたか、どんな風にしたのかというのが、本当に重要という。

一番最初にエッチした時は、男が女の髪を引っ掴んで壁に叩きつけたりとか、ベルトでしばいたりとか、

「変態?!」

とか思ったんですけど、映画を全部観終わったあとで考えてみるとあれは、中国を占領している敵国・日本のために働いていて常に命を狙われている男が、誰にも心を許さずに生きてきたのに、どうしてもあがらえない、この女に魅かれてしまう、負けたくない、という気持ちが、あのような暴力的なセックスに出ちゃうのじゃないかしらと思いましたね。「俺がこの女を犯すんだ!俺は絶対に落ちないぞ!」と思いたかったんじゃないか。

で、あんだけヒドイ目に合わされながら、終わった後、「ニヤリ」と笑う女・・・・

この女はですね、大学で演劇部の部長にほのかな恋心を抱いて部員になったという、ウブな処女だったのに、部長が抗日活動にハマって行くのに引きずられて巻き込まれちゃうのですが、持ち前の演技の才能とその美貌のために、この売国奴である政府要人の男を誘惑するスパイにされてしまう。

この女の駆け引きの仕方が、セックスのシーンも含めて、男に近づくために化けたマイ夫人としてのリアクションなのか、ウブな女子大生・チアチーとしての彼女の本当の感情なのか、良くわかんないんですね。で、良くわかんないからセックスのシーンとかでも真剣に分析しちゃうんですよ。

2度目のセックスは、1度目の時より断然親密で、男は暴力とか振るわないんだけども、いつも女の目を見つめながらやってるのは、やっぱ今一歩信用していないようなんですが、よっぽどセックスがいいのか、イク時、完全に防御を下げちゃってるんですよね。女の方は、思いっきり中でされちゃって、自分もイッっちゃったんだか、イヤなのか、どちらでも取れるリアクションをしつつ、

「アパートを買って」

なんてあえぎながら絶妙のタイミングで言うのですが、これがスパイとして言ってるんだか、女としてこの男に陥落されてるのか、わからないんですよ!

で、スパイの上司に会って、男がアパートを買うと言った、と報告した時上司が、ここまで潜入できたんだから、すぐに男を殺すのはもったいない、もう少し愛人生活を続けて、色々情報を引き出そうと言うと、女はすごい告白をするんですね。

つまり、男は犯って犯って犯りまくらないとリアリティを感じられない男で、血が出るまで自分を攻める、こいつを受け入れる度に、男は私の身体だけでなく心にまで入り込んでくる、だから、私も疲れて動けなくなるまで男を攻め返す、それがこの男の心に入り込める唯一の方法だから。犯られる度に、いつスパイの仲間が飛び込んできて、こいつの頭を撃ち抜き、脳みそが私の身体に飛び散って、「ああ、これでやっと終わった」と思う日が来るのかと思っている、とか言うわけですよ。

これも最初は、血が出るまで犯られるって女としてはキツイし、早くこいつを暗殺しちゃってよ!と言ってると思っていたのですが、後々良く考えてみると、男が心の中に入り込んでくる、っていう下りは、好きになっちゃいそう、好きになりたくないから、早く殺しちゃって、というのと、好きになりかけている男がいつ殺されるかわからなくて辛い!と言ってるのか、両方に取れるんですよね。

その直後に3度目のセックス・シーンがあるんですが、そこでは女が男の拳銃をじーっと見つめながら上に乗っかっていると、男がそれに気付いたり、女が上になって男をイカせそうになると、男は慌てて上になって攻めたり、で、終わった後女が泣いたりするのですが、これはストレス泣きなんでしょうかね。

私的にクライマックスは、日本人街の芸者屋さん(って言わねーか)のお座敷で、女が男のために歌を歌うところ。やたらロマンチックな歌で、

あなたのハートと私のハートは一つ、辛いときに結ばれた二人は死んでも一緒

とかそういう歌詞で、女が振りつきで歌う。これがこの女優さん、振りの表現とか表情とか、すっごいいいんですけど、男も涙を拭いながら

ぱち、ぱち、ぱち

と淡白に拍手するところが、もう完全にこの女にホレちゃったな、と思わせるんですね。余談ですが、この時のトニー・レオンがすっげえオヤジ臭くて、私的にはがっかりしたのですが、役柄としてはこれ以上ない、という寂しい中年男を演じてました。

ここで男が女にホレた、というのははっきりわかっちゃうのですが、女の方は、まだ釈然としないんですね~。この辺のじらし方がまたさらにこの先どうなるのかハラハラさせて上手いんですけども。で、男が女に、この封筒を持ってしかるべき男に会いに行け、極秘だ、男がなにか言ったら俺に伝えろ、っていうんですね。これが「あれ?もしかして女がスパイってバレて、はめられるのか」とか思うと、実は女にすっごい高い指輪を買ってやるという下りだったりとか、こういうはずし方も上手いんですよ。

で、この指輪云々って言うのは、最初の方で男の奥さんがマージャンしながら「うちのだんなはあのダイヤモンドを買ってくれなかった」と言っていたダイヤよりデカい、ピンクのダイヤなんですよね。そういう伏線もさりげなく張ってあったりしていい。あと、原題の『色戒』って言うのは、英語題の『Lust, Caution(欲情、警戒)』という、要するに「欲情に気をつけろ」という意味と、「色の付いた指輪」っていう、ダブル・ミーニングなんだそうです。

このダイヤを指輪に作る注文をして、出来上がったものを男と一緒に取りに来るときに暗殺しようと言う計画なのですが、出来上がった指輪をはめてみて、取れなくなっちゃうんですよね。で、そん時女がなんとか取ろうとして取れなくて、涙ぐんできちゃうんです。

このときでさえまだ私は、「ああ~この指輪が取れないと、完全にこの男のものになってしまったような気がしてイヤなのかな~」なんて思っていたのですが、その後女が、

「逃げて」

と言ったときに初めて、「ああ、やっぱり惚れちゃったのか」と思ったんですね。

でもさ、やっぱ女は惚れたくなかったんだと思うんだな。最後、この事件に関わった大学の演劇部時代の友達が一列に並ばされて銃殺されるとき、女の隣に、かつてほのかな恋心を抱いていた部長が座るんだけど、こんな情けないヤサ男と恋愛ごっこしていたかっただろうなあと思った。

しかしアン・リー監督ってのは、あんな顔してすっごいロマンチストだよなあ。現代だったら、女スパイってちゃんと訓練されていて、敵と寝てもケロッとして、自分も楽しんじゃいそうなもんだけど、こんないたいけな処女が百戦錬磨の男を相手に、しかもただ絡め取られてセックス奴隷になっちゃうんじゃなくて、好きになりたくないのになってしまうという。じと~っとしているところがステキです。

key Word
映画 ラスト、コーション アン・リー トニー・レオン タン・ウェイ ワン・リーホン ジョアン・チェン チン・ガーロウ
この映画がすごい!! | コメント(5) | 【2008/07/06 20:24】
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「嫌いなら観なきゃいいじゃん」と言うほど馬鹿げた理論はない!とアジテイトする『姫のお楽しみ袋』

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