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『あぁ、結婚生活』-ああも言えるし、こうも言えるし
Married Life

「人は、他人の不幸の上に幸福を築くことはできないと思う。そういうことができちゃう人もいる、でも、良心の価値がわかる人にはできないと思うんだ。君はいい人過ぎる、そういうことするには」

あぁ、結婚生活 [DVD]
dvd on amazon.com
Produced: 2007
Director: Ira Sachs
Writing Credits: Ira Sachs, Oren Moverman
Cast:
Harry Allen: Chris Cooper
Richard Langley: Piercw Bronsan
Pat Allen: Patricia Clarkson
Kay Nesbitt: Rachel MaAdams
この映画、すごく面白いですよ。特にテーマに興味がなくても、観終わった後、この映画は何を言わんとしてるのか、価値観はどこにあるのか、何が正しい道だったのか、何人かで観たら意見が割れるような、上手い作りになってます。

クリス・クーパー演じるハリーは、50歳で全く安定した生活を送っているのに、ケイ(レイチェル・マクアダムス)という若い未亡人と一緒になりたくて、奥さんのパット(パトリシア・クラークソン)と別れようとしている、自分は、ケイといるときが一番幸せだ、結婚生活は空虚だ、でも、離婚することでパットを傷つけるのは忍びなくて、なかなか踏み切れない、と親友のリチャード(ピアース・ブロスナン)に打ち明けるのだが、ケイを紹介されたリチャードは、ケイに一目惚れしてしまい、マジに恋に落ちてしまう。

しかもリチャードは、実はパットにも愛人がいることを知ってしまう。相手の男ジョンはリチャードともハリーとも友達の男。パットは「私たちは本当に愛し合っているの。でも、ハリーは他に誰もいない。私しかいない。だから離婚はできない」という。リチャードにとってはいい風向きではない。自分はケイを寝取りたいのに、ハリーとパットが円満に別れられては困る。そこでリチャードは、冒頭の台詞をパットに言って、ハリーと別れるべきではない、と言う。

一方ハリーは、なんとパットを殺すことを計画する。自分に捨てられることによってパットが傷ついたり、不名誉な思いをさせるには忍びないから・・・・。パットの心臓病の薬に毒を混ぜて、心臓発作に見せかけて殺そうとチャンスを狙っている。

(ネタばれしちゃいます)

リチャードは、ハリーに隠れてケイをデートに連れ出し、くどきつつ冒頭の台詞を言って、ケイにも良心の呵責を感じさせ、最後には完全に絡め取ってしまいます。んで、最後に、今度はケイがハリーに冒頭の台詞を言って、別れようとする。

で、面白いのは、実はリチャードとケイがくっついちゃって、自分は愛人と親友を両方失くした、と気づいたハリーは、奥さんを救おうとするんですね。自分の結婚生活は不毛だ、とか言ってたけど、親友と愛人を同時に失った後では、結婚を失いたくない。慌てて家に帰り、奥さんが毒を飲まないようにする。

一年くらい経ってから、リチャードはハリーとパット夫妻にケイをフィアンセとして紹介する。「可愛い人ね」何も知らずに言うパット。この夜、ハリーはリチャードに、自分がパットを殺そうとした顛末を打ち明ける。

この後、ケイとリチャードは結婚し、パーティの席でパットの愛人のジョンは他の女と一緒にいる・・・・・・。

私が可笑しいと思ったのは、みんな自分が離婚するって言ったら、相手がものすごく傷つくだろう、と思っているのに、実はみんな別れて他の人とくっつきたがってる、って言うこと。冒頭の「他人の不幸の上に幸福は築けない」って台詞が、ギャグになっちゃっているわけです。しかもこの台詞は、愛のない結婚生活でカラカラに乾いているハリーがやっと見つけたオアシスのように思っているケイを、寝取ろうとしているリチャードから発せられる。

リチャードは、ハリーやパットやジョンの不幸の上に自分の幸福を築いたのでしょうか?これは人によって意見が異なると思います。ケイはハリーを愛していると思い込んでたけど、この二人がくっついたら上手くいかなかったんじゃないかなあ、とか、なんだかんだ言っても、ハリーとパットは幸せなんじゃないかなあとか、ジョンは彼女ができたみたいだし、とか、最後いろいろ思うんですね。本当に、個人的な結婚観で意見は全然違ってくると思います。

それと、その結婚観自体がチャレンジされますよね。この映画では、結婚している人はみんな別れたがっている。心はバラバラ。でも失いそうになると慌てて取り戻そうとする。そのくらい尊いものだ、と言っているのか、こんな中身のないものにしがみついて生きてるんだよ、人間は皆、と言っているのか、どっちにでも取れちゃいますよね。それとか、自分が思っているほど結婚相手にとって自分は大切じゃないんだ、という取り方もできるし、逆に全く心が通じ合ってないように見えても、いざとなると実はお互いがかけがえのない存在なんだ、と言っているようにも見える。

私の個人的な結論は、「どっちに転んでもOK!」でしたね。年齢関係なく、愛と情熱に流されて電撃離婚するもよし、ぐっと自分を抑えて不毛(と思われる)結婚に留まってもよし。なんか、どっちにしても自分が感じる幸福/不幸はあんま変わらないんじゃないかと思った。プラマイゼロ、つーか。よっぽど暴力を振るわれるとか、なんかそういう具体的な不幸な要因があるのでなく、漠然と不毛な、愛されていると感じない結婚、もしくは人間関係ってのは、言われているほど幸福と言うものに対するインパクトはないのかも?仕事つまんないけど給料結構いいし、とか、もっと素敵な家に住みたいけど今の借家でもこと足りてるか、とか、その程度のものなのじゃないか?と。

クリス・クーパーはみんな知ってる優良な性格俳優ですが、今回良かったのはピアース・ブロスナンでしたね。「この人が出演してる映画って絶対一本も観た事ないだろうな」と自信を持って言えるのに顔はよーく知っているというコイツ誰?とか思ってたら、90年代にジェームス・ボンド演った人なんだってね。そりゃあ知ってるはずだ。この人が案外演技派で、パットとジョンの逢引を目撃しちゃってオタオタするところとか、上手いのよ。観てて面白かった。ナレーションも全編通してこの人だったしね。

あと、クリス・クーパーの若い愛人を演じるレイチェル・マクアダムスはいいね。『パニック・フライト』の時、デコっぱちで変な顔だけど、しぐさや雰囲気が可愛い娘だなあ、と気に入ってたんですけど、この映画でもすごいいい感じです。クリス・クーパーの奥さん役のパトリシア・クラークソンは、トシなんだろうけど、すごいキレイでスタイル良くって、トシでも保つ人は保つなあ、と感心した。

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| コメント(2) | 【2008/09/28 08:11】
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「嫌いなら観なきゃいいじゃん」と言うほど馬鹿げた理論はない!とアジテイトする『姫のお楽しみ袋』