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『マーゴット・ウェディング』-これ、アタシじゃん!
Margot at the Wedding

ブロ友プリシラさんが紹介していたこの映画。気になっていながら食指が動かず仕舞いだったんだけど、『イカとクジラ』のノア・バームバック監督・脚本、しかも『イカ』の主人公だった家族の、お母さんと下の息子が今回の主人公と読んで「おお~これは観なければ!」と。『This Is England』もプリシラさんの紹介だし、いつもいい映画教えてくれるんだよね~。

マーゴット・ウェディング
dvd on amazon.com
Produced: 2007
Director: Noah Baumbach
Writing Credits: Noah Baumbach
Cast:
Claude: Zane Paris
Margot: Nicole Kidman
Malcom: Jack Black
Pauline: Jennifer Jason Lee
Maisy Koosman: Halley Feiffer
Jim: John Turturro
プリシラさんが「いや~『イカ』同様、やな女なんですよ、このお母さんが!」って言っていたので「そうなのか~」と思って観たのですが・・・・・なんだよ、これって

アタシじゃん!!

て言うかさ~、アタシ、こういう人解っちゃうんだよね~。本人、全然悪気ないんだよ。思ってもないこと言えないし、いや、でも、相手の気持ちも考えろよ、とか思うけど、考えてるのよ!で、言葉も選んで言ってるんだけど、ズレてるんだな~。で、相手にすっごい傷つかれて、言い返されて、「なんで?なんで?!」って思っちゃうんだよね。あ~あ。マーゴットって、B型なのかな?!

しかも自惚れやで、調子に乗りやすくて(いいトシして木登りして降りられなくなったり)、ロマンチストで(ほっときゃいいのに子供の靴を届けてあげたり)、息子をものすごく愛しているんだけど、母親になりきれず男作ったり、その上その息子に依存している。本当はすっごく不安定な性格なのに、なぜか他人を寄せ付けなくて、それで姉妹とか母親とは疎遠になっちゃって、で、悪いな、と思ってるんだけど、会うとまたウザったくなっちゃうの。

まあ、この人の周りにいる息子とか旦那とか妹とかは大変だと思うけど、もーこういう人ですから!あきらめてください、としか言えません。

でも、今回は、お父さんの方がやけにいい人に描かれてるじゃん。しかもジョン・タートゥーロが演じてるし。やっぱ『イカ』で散々な描き方をしたから、今回のターゲットはお母さんの方なんでしょうか。そういえば、マーゴットがオナニーするシーンがノア・バームバックのインタヴューでも話題になってたけど、あんなのほんのちょっとじゃん。そんなすごいシーンかな。それより「うつ伏せでするのか!」とその方が気になってしまった。

超爆笑したのが、マーゴットとクラウドがポーリーンの家に着いて最初の夜のディナーで、「トシ取ると、人の名前が思い出せない」って話になって、マーゴットが、誰かの名前が思い出せなくて困ったエピソードかなんか話した後、ジャック・ブラック演じるマルコムが、

「そんなのいい方だよ。おれなんかモトリー・クルーのベーシストの名前が思い出せない・・・・」

って言うんだけど、誰も聞いてなくて、みんな他の話をしているのにジャック・ブラックが

「ミック・マーズ」

って一人でつぶやくの!!これって、IMDbで読んだら、マジにジャック・ブラックが間違えたんだけど、余りに可笑しいのでそのままにしといたらしい。

しかし、この邦題は、これまたすごいですね。『マーゴット・ウェディング』。コレだけ見たら意味不明だよ。「マーゴットの結婚式」でもないし、まるで「マーゴット・ウェディング」というスタイルの結婚式があるかのようだ。「at the」とか安易に取るなよ~。『ウェルカム・ドールハウス』と一緒で、前置詞とか冠詞とか馴染まないと思うんだったら、単純に『マーゴットが出た結婚式』でいいじゃん。『マーゴット結婚式に行く』とか。『マーゴット・アット・ザ・ウェディング』でも別に違和感ないと思うしな。ほんと、この辺のセンスはわかりません。

まあ、実際、マーゴットが行ったら結婚式自体が流れちゃった、というのがお話のポイントなのだろうが・・・・・

映画 マーゴット・ウェディング ノア・バームバック ニコール・キッドマン ジェニファー・ジェイソン・リー ゼイン・パイス ジャック・ブラック ジョン・タートゥーロ
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日本未公開映画 | コメント(3) | 【2008/10/12 06:25】
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『ハピネス』-ポジティヴな姿勢を批判?
Happiness

レストランでのデートシーンから始まるこの映画。デートしている男女は普通の、どっちかというと冴えないカップル。しかも、楽しくデートしているのではなく、女の方が別れようとしている。言葉を選んで話しているのですが、男に「お前はクソだ。俺がクソなんじゃない。お前は死ぬまでクソだ」と逆ギレされてしまう。

hapiness
dvd on amazon.com
Produced: 1998
Director: Todd Solondz
Writing Credits: Todd Solondz
Cast:
Joy: Jane Adams
Allen: Phillip Seymour Hoffman
Dr. Maplewood: Dylan Baker
Helen: Lara Flynn Boyle
Trish: Vynthia Stevenson
Billy: Rufus Read
Kristina: Camryn Manheim
この女の人が、『リトル・チルドレン』で、性的異常者・レニーとデートするあの暗い女の人を演じた、ジェーン・アダムスなんですよ。もう、あのまんまです。『リトル・チルドレン』観た人なら、このキャラの行き場のなさが良くわかってくれると思います。

このシーンのすぐあとが、フィリップ・シーモア・ホフマン演じるアレンのセラピーのシーンで、アレンが

「あの女を・・・・犯して・・・・ひっくり返してもっと犯して・・・・そんなことばっかり考えている・・・・」

ってシーンなんですから、『ハピネス』というタイトルがいかに皮肉かってのがわかってもらえるかと思います。

マグノリア』を彷彿とさせる群像劇なんですが、救いのなさが『ハピネス』の特徴ですかね。英語ではこういうの良くDisturbingと言われますね。辞書では「心をかき乱す」とか訳されてますが、「カンに触る」「神経に障る」「いや~な気分になる」って感じですかね。

で、アレンの精神科医のドクター・メイプルウッドは、お金もあって、幸せな結婚生活を営んでいるように見えるんですけど、じつは小さい男の子を犯したくて、日夜悶々としている。その妻はなーんにも考えていない、アメリカの典型的な中産階級、その妹が冒頭で男と別れようとして罵倒されたジョイ、もう一人の妹のヘレンは、人気作家ですっごい美人で男は遊び放題で、アレンが妄想しているのはこの人、という設定。

とにかく、最後に幸せになる人がいないんですけど、完全に100%不幸になる人もいないんですよ。要するに何も変わらない!これって一番disturbingですよね。群像劇ではありますが、一応、ジョイが主人公みたいなんですけど、この人ホント、なんでこんな運が悪いの?!って感じよ。

冒頭、男を振ってるんですけど、普段は振られてばかりみたいで、お姉さんたちは家庭と仕事で成功しているのに、自分は両方だめ。ミュージシャンなんだけど、全く才能なくてそっちは全然ダメだし、行き先のないテレ・マーケティングの仕事を辞めて、亡命してきた外国人に英語を教える仕事を始めるんですけど、生徒に全然好かれないという、こういう人、本当にいるんだろうか?!って感じです。

で、フィリップ・シーモア・ホフマンも、お得意のデブで冴えない変態を演じてるんですけど、いたずら電話してマスかく、という超悲しい、危ない男です。で、隣に住んでる、美女で人気作家のヘレンに恋しているんですけど、このヘレンは『ツイン・ピークス』でドナ役を演じた、トラディショナルな美人(一般には『オースティン・パワー』の方が有名かもね)のララ・フリン・ボイルで、なんでこんなどうにもならない女に惹かれるんだよ!とイライラするのですが、結構釣り合うデブでブスのクリスティーナにやっと落ち着いたかと思ったら、クリスティーナは、自分をレイプしたアパートのドアマンを殺してバラバラにしていたという・・・・・もう、とほほでしょ?

小児性愛者のドクター・メイプルウッドは、可愛い男の子を犯す妄想ばっかり見てるんですけど、息子がちょうどその歳で、息子の友達を犯っちゃうんですよ!息子が話す友達のことを妄想するみたいで、がまんできなくなって犯りに行っちゃったり、ちょっとカマっぽい男の子がお泊りに来たとき、睡眠薬で眠らせて犯したりしてる。あーあ。で、学校で噂になって、息子が「パパ、本当にやったの?」と聞くと、「イエス」って言うんですけど、このとき息子が泣くんですね。これが可哀想ですねー。自分の父親は変態なんですよ。小児性愛を変態よばわりしていいかはわかりませんが、少なくともこの人たちにとっては変態で、お父さん自身が自分をおかしいと思ってるんですから。行き場がありません。

考えてみれば、『リトル・チルドレン』でも、小児性愛者が出てきましたよね。小児性愛者って、本当に行き場ないですよね。子供がいたずらされるのは可哀想なんですけど、子供しか愛せないって人も悲劇ですよね。このお父さんは、なんとか自分の性欲を抑えようとしてるんだけど出来ないみたいで、そうなっちゃうともう社会に受け入れられないんですもんね。

まー要するに何が言いたいかって言うと、多分、アメリカの"Go-Getter"、目標に向かって常に前進する、とか、がんばれば何でも手に入る、みたいな非常にポジティヴな姿勢に疑問を投げかけているのだと思います。手に入らないものはわんさとあるし、生まれついて持っているものは変えられない。ブスでデブに生まれてきたら、ブスでデブなんだよ!という。

こういう思想はネガティヴとされていますが、私はそうじゃないと思うんですね。というのは、「誰でも幸せになれる」と思うから、幸せになれないと不幸に感じるのであって、「自分の人生はこんなもんよ」と最初から肯定した方が、幸せじゃなくても、ストレス感じて、頭オカシクなったりはしないですよね。

ダイエットってのが一番いい例じゃないですか?みんな努力すれば、モデルみたいにきれいになれる、と思うから食べないで我慢したりする。また、努力でどうにでもなるものだ、という考えがあるから、デブの人は「努力しない人」とみなされ、バカにされる。でも、現実にモデルみたいな体型になれる人は全体の10%くらいしかいなくて、だから10代の女の子たちが拒食症で死んで行くんじゃありませんか。

だから、結局、この映画に出てくるいわゆる「Loser(落ちこぼれ)」を生んだのは、一見良いことに見える「ポジティヴ・シンキング」や上昇志向で、人間ってのは多少だら~と生きてる方が幸せなんだよ、と言ってるんじゃないでしょうかね。私はそれ、賛成ですが。

key Word
映画 ハピネス トッド・ソロンズ ジェーン・アダムス ララ・フリン・ボイル シンシア・スティーヴンソン フィリップ・シーモア・ホフマン
映画レビュー | コメント(3) | 【2008/07/07 00:40】
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『イカとクジラ』-離婚したからと言って、悪い結婚だったとは限らない
The Squid and the Whale

もーこの親父、最悪。こういう人と結婚したり、こういう人が親だったら、本当、最悪なのだが、これがまさにその最悪の状況に置かれた人たちの話です。

イカとクジラ
dvd on amazon.com
Produced: 2005
Directed by: Noah Baumbach
Writing Credits: Noah Baumbach
Cast:
Joan: Laura Linney
Bernard: Jeff Daniels
Walt: Jesse Eisenberg
Frank: Owen Kline
Ivan: William Baldwin
Lili: Anna Paquin
この家族がどんな状態なのかは、一番最初のテニスの試合のシーンで、非常に簡潔に示されている。末っ子のフランク(オーエン・クライン)のナレーションで、

「僕とママ、君とパパ、の対決」

と流れ、テニス・コートではこっちにママ(ジョアン)とフランク、あっちにパパ(バーナード)とウォルトがいる。

全くこの父親のバーナードは、家族でやっているテニスなのに、闘争心むき出し。自分と組んでいる長男に

「母親のバック・ハンドを狙え」

なんて指示したり、次男のサーブがアウトだと言い張ったり、挙句はテメーで母親狙って思いっきり球打って、怒らせたり。

次のシーン、子供たちの会話で、実はジョアンもバーナードも作家なんだけど、ジョアンの方は段々売れてきているのに、バーナードは全く売れず、大学の教授(講師かもしれない)でなんとか食いつないでいるらしい。長男のウォルトが

「ママは本物の作家じゃない。パパは本物だ。ママは、パパに感化されるまで、書いたことなかったんだから」

なんて言っているのを聞くと、バーナードがしょっちゅうそう言っているのだな、なんてことがわかる。

弟のフランクはママ派なんだけど、それだけでなく、この子は余り物事に先入観がないらしく、「ママの方が優れた作家なのかもしれない」とか、父親がバカにする、芸術に興味のない体育会系の人たちでも、面白い人はいる、と思ったりする。

ママは、ローラ・リニーが演っているんですが、かなり共感するキャラですね。設定が1986年なので、丁度ヒッピー文化の真っ只中に青春期を迎えたのだと思うのですが、かなり性的に開放されているようで、子供にもその手の話はガンガンしちゃったり。しかし彼女が浮気していたのは、フリー・セックスを信奉しているからではなく、バーナードが自分の才能を認めてくれないばかりか、売れないことで卑屈になっていることに耐えられなかったからだと思います。

結局この二人は離婚することになるのですが、面白いのは、ジョアンは浮気したことをバーナードに隠そうともしなかったらしい。というか、わざと知らしめるように、手紙や映画の半券を見えるところに置いといたりした、という口論があるのですが、これってなんなんだろう、と思ったら、復讐なんですね。ジョアンはバーナードが作家としてのライバル心むき出しにしてくることが嫌いだったと思うのだけど、だからさっさと別れよう、というんじゃなくて、浮気して苦しめる。

バーナードの方は、すっごい離婚したくないみたいなんだけど、これってさー、この人、人のこと批判したり見下したりするけど、自分はこの家族を失ったら何もない、ってことがわかっているからなんだよね。もう別居し始めてからまたジョアンのところに来て

「家事をやったり、ご飯作ったり、なるべく一緒に過ごすように努力したけど、それじゃだめなのか?」

と言うとジョアンは、

「あなたがいつご飯を作ったの?」と言う。するとバーナードが、

「君が具合悪かったとき」と言うとジョアンが

「あれは私が作ってと懇願したから、やっと作ったんでしょ?」と言う。するとバーナードが、

「・・・・じゃあもっとご飯を作ったら、別れないで済むのか?」と言うするとジョアンは・・・・・

笑い始めてしまうのだ!!

この気持ち、良くわかるな~!問題はそんなことじゃないのに、全く気がついてないんだよ、この男は。でもこれってさ、無意識に気がつくのを避けているんだよね、きっと。バーナードは、ジョアンに対する嫉妬や、卑屈になっていることを乗り越えるためには、自分はジョアンより才能なかったんだ、と認めることしかないわけよ。でもこれを認めるということは、自分の人格の崩壊になってしまうわけなんですね。だから自己防衛機能として、認められない。けど、何かしないとこの結婚を救えないので、それ以外のことで埋め合わせしようとする。でもジョアンにとって許せないのはこの一点なので、そこじゃなきゃダメなんだ。あーなんとも難しい。

弟のフランクは、完全に父親の子供依存の犠牲になってますね。アメリカでは離婚のとき、Joint Custodyといって、子供は母親と父親の家を行ったりきたりして、離婚しても2人で平等に面倒みるようにすることができる。私の友達もコレで、娘が週末は彼女と一緒、平日は別れた夫といる。バーナードは、火・水・土は自分で、木曜日は隔週で自分、とか移動する子供たちの苦労は考えず自分に都合にいい決まりを作って、子供が変更したいというと絶対ダメ、という。そのくせ、自分は子供が来ている日にウォルトだけと映画に行っちゃったり、週末に旅行に行っちゃったりしてフランクを置いてけぼりにする。で、フランクはママのところに行くんだけど、ママは、今日は子供といる日じゃないから、恋人といる。

それで、酒飲み始め、学校でオナニーして、精子を図書館の本に擦り付けたりという行動に出る。こういうことする子って、自分の居場所がどこなのかわからなくて、孤独なのだろうな。12歳だから、丁度、性的に目覚めちゃうのと、誰かに自分の寂しさに気づいて欲しい、という気持ちが合体して、こういう行動になってしまうんだろうなあ。でも、こんなことしていても、この子は最初のように、余り物事に先入観もなく、洞察も深く、素直でいい子なのよ。ちなみにこの役を演ってるオーエン・クラインって子は、かのケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの息子で、すっごいこの役上手いです。なお、ケヴィン・クラインとフィービー・ケイツは、私の大好きな『殺したいほどアイラブユー』で共演しています。

この物語は、脚本・監督のノア・バームバックのほとんど自叙伝らしい。冒頭のナレーションのせいで、フランクが本人なのかと思っていたら、実は長男の方が本人らしい。この長男は父親そっくりで、父親の言うことならなんでも聞いて、お母さんに辛くあたり、父親似だから屁理屈で尊大で偏見強くて、その割りに才能なくて、超ムカつくガキなんだけど、コイツはPink Floydの『Hey, You』を自分で書いた曲としてTalent Show(学校の文化祭みたいなもの?)で演奏し、加えて宿題もほとんどやっていないことから両親が先生に呼び出され、結局、精神科医のセラピーを受けることになる。

で、最初はもちろん小憎らしいこと言って抵抗するのだが、この子は自分が思っているほど頭良くないので、すぐ色々話始めてしまう。ここで、タイトルにもなっているイカとクジラの話が出てくる。ミュージアムにあった、巨大なイカとクジラの展示。小さいとき、怖くて見れなかったが、うちに帰ってから母親がその展示物の描写をすると、それは怖くなかった。あの頃、母親とは友達みたいだった。あの頃、弟が生まれる前・・・・・

これを聞いて、そうかー、と思った。本当はお母さんが大好きだったんだけど、弟に取られたような気がして、それでお父さん側に着き、愛情を得るためにお父さんの気に入るような子供になった。お父さんは自分に自信がなくて依存心が強いから、この愛情に飢えたウォルトを完全に自分の手下に置こうと、色んな心理的プレッシャーを与えて操った。そう考えると、ただ表面だけ見て「この子キライ」と言えなくなってしまう。この、「やなガキ!」と感じさせて置いてから「この子悪い子じゃないんだ!」と思わせる辺りの流れが、映画的にすっごい上手い。

しかもウォルトは、この一連の離婚騒動を通して、成長するのだ。父親に、もうしばらく父親の家には行かないと言う。バーナードは、いつもの「That hurts my feeling(そんなこと言われると傷付く)」とか「Don't be difficult(難しいこと言うなよ)」とか言って、ウォルトの罪の意識に訴えようとするのだけど、今はウォルトは、こんな父親の本性が見えてしまい、可哀想に思って泣いてしまうのだが、うんとは言えないんですね。そして、ミュージアムに行って、例のイカとクジラの展示を見るところで映画は唐突に終わるのだけど、これはウォルトが、現実に立ち向かう、自分の抱いていた恐怖に立ち向かう準備ができた、ってことを示唆しているのだと思う。

ウォルトはそんな風に出来たんだけど、父親であるバーナードは、ずーっとできなかったんだよなあ。こういうところが、人間って年齢だけで判断しちゃいけない、ってところなのよね。大人うんぬんというより、人間の度量と言うかさ。そういう目で見れば、一番大きいのはフランクだよね。バーナードは度量が小さ過ぎる。

淡々としているんですが、こういう洞察に溢れていて、しかも私のようなアホでもわかる描写、でもタイミングが絶妙なので、押し付けがましくない、しかしインパクトの強いキャラの性格描写のある映画です。特に離婚そのものや、それが子供に与える影響をリアルに描写している。離婚が子供に悪い影響を与える、とか、親の子供への接し方がトラウマになる、とか言われますが、確かにその通りなんだけど、多かれ少なかれ、こういう体験がない人はいないわけで、しかも子供はこういう経験を通して成長できるのだなと思った。私も両親離婚して、トラウマも色々あるので、なんか勇気づけられたわ。

DVD特典のインタヴューでローラ・リニー

「離婚したからと言って、悪い結婚だったとは限らない」

と言ってたけど、その通りだなと思った。

key Word
映画 イカとクジラ ノア・バームバック ジェフ・ダニエルズ ローラ・リニー ジェシー・アイゼンバーグ オーウェン・クライン ウィリアム・ボールドウィン アンナ・パキン
映画レビュー | コメント(10) | 【2008/06/07 23:38】
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『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』-面白いけどイマイチ良くわかんねー
There Will Be Blood

最初の30分くらい、なんかぼーっと観ていて、どってことなかったのですが、ポール・ダノ演ずるイーライ牧師の説教で、すっかり眼が覚めました。すげえ!ポール・ダノは、最初キャストされてなくて、やってくれ、って言われたのが撮影の3、4日前だったんだそうです。で、急いでエヴァンジェリストのリサーチして、ビデオ見て、役に挑んだらしいんですけど、すごい良くできでたよ~。この人上手いね。ここから一気に観る気にさせられました。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
dvd on amazon.com
Produced: 2007
Directed by: Paul Thomas Anderson
Writing Credits: Paul Thomas Anderson, Upton Sinclair
Cast:
Daniel Plainview: Daniel Day-Lewis
Paul/Eli Sunday: Paul Dano
Henry Brands: Kevin J. O'Conner
H.W. Plainview: Dillon Freasier
これがPTA監督作品だって知らなくて、観終わった後、「どーりで音楽が変!」とか思ってわろた。『パンチ-ドランク・ラブ』でも思ったけど、今回も知らないで見てるのに「変わってる音楽だなー」と思いながら観てたよ。場面にそぐわない、というのではないんだけど、要するに一般的な映画音楽じゃないんだよね。石油掘り起こしてるのが爆発して、吹っ飛ばされた息子、H.W.を抱えてダニエル(ダニエル・デイ=ルイス)が走っているバックに流れている音楽とか、すごい印象に残る。

で、その主人公のダニエル・・・・この人はなんだか良くわからないよ、私は。いろんなもの掘り起こして一攫千金を狙っている一匹狼で、その情熱ゆえにとうとう石油掘り起こしちゃった。石油があるらしい土地に行って調べまわる緻密さとか、出会う人に対する礼儀正しさとか、まあ、ビジネス・マンだから金にならないことはやらないにしても、それほど腹黒い人でもなさそうだ。石油掘ってるときに死んじゃった同僚の孤児を引き取って育ててやって、この子のこと、けっこう愛しているみたいにも見えるし。

かと思うと、油田を買う交渉に来た人が「俺たちに売って、引退して、息子の面倒を見てやれば」と言うと急にキレて、「俺が自分の息子をどう育てるかに口出しすると、殺すで」ぐらいのこと言っちゃうし、腹違いの弟、ヘンリー(ケヴィン・J・オコナー)に「俺はすごく競争心が強くて、他の人が成功するのは耐えられない」とか言ってるし、なんだか掴めないキャラだ。そこがPTAたる所以なのかな。

ネタバレに入りま~す。

で、この腹違いの弟ヘンリーが実は偽者だとわかると、あっさり殺してしまう。これも意外だったなあ。で、よよと泣くのだが、何、これは、エゴが強くて、自分をだましたり、自分のすることに口出ししたりする人は絶対に許せないのだけど、やっぱり心が許せる人が欲しい、孤独だ、という「よよ泣き」なのかしら。

息子H.W.が大きくなって結婚し、自分の会社を立ち上げたいから、パートナーシップを解消してくれ、と言ってきたときも、「俺の競合になるつもりか」と責めて、「お前は俺の息子じゃない。お前は天涯孤独だ、バスタード以下だ」と、なんかヒドイ人になってしまう。

これって、あれか、自分のイエスマンで、なんでも言うこと聞いて、ペットのように自分の側にはべってなついている人はいいけど、自分の意見を真っ直ぐ言うような人はダメ、ってこと?さらに息子に「お前は俺の"息子"というイメージをぶち壊した」と言うんだけど、小さい頃のH.W.は、ダニエルの言うことを良く聞いて、利発そうだったから、それが大きくなってきて自我を持ち始めたから気に入らないんだろうなあ。やはり、自分以外は嫌いな人なのか。

で、ラストにイーライを殺したときは目が点になってしまいました。確かに、あの、教会での洗礼のシーン、あの時、「私は子供を見離した」って何度も言わせてるイーライが意地悪だな~って思うよね。あのダニエルの屈辱感!すっげームカついて、イーライのことを睨むシーン見た?あれは名演技だったよね。とにかく、あれを根に持ってて、それで「私は偽の預言者です。神の存在は迷信だ」って何度も言わせるというのはわかるのだけど、殺すか!

このイーライとダニエルの対立がかなり大きな比重を占めているようなのだが、なんの対立なんだろう?PTAの映画って、面白いんだけど良くわかんねーんだよね。あとさ、最初に油田がある、と情報を持ってきた、イーライの双子の片割れ、ポール(ポール・ダノのダブル・キャスト)、コイツはどーなったんだろう?ダニエルがイーライに「ポールは自分で油田を掘り起こして、週に5千ドル稼いでいる」って言ってるけど、多分作り話じゃないかと思うし。コイツの存在意義も、イマイチ掴めねーしなあ。

物語の教訓がないところがPTA作品の特徴なのだろうか。

■アノラックとスノトレのGOさんが、納得行く解説をしてくれてます。こちら
■極楽三十路生活賛歌さんも、わかりやすいレヴュー書いてくれてます。いやー、いいブログ友達を持ったもんだ、私。

Key Words
映画 ポール・トーマス・アンダーソン  ダニエル・デイ=ルイス ポール・ダノ ケヴィン・J・オコナー
映画レビュー | コメント(4) | 【2008/04/14 00:27】
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『酔いどれ詩人になるまえに』-マット・ディロンが演じるアル中作家・ブコウスキの下積み生活
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チャールス・ブコウスキとの初めての出逢いは、アメリカに来たばっかりの頃、まだ英語もつたないと言うのに性格がバレて、「あんたきっとブコウスキ好きだよ、読んでみな」と言われ、辞書片手に読んだのですが、飲んだくれで、ボヘミアンなぶっ飛んだおっさんの話で、結構面白かった。意外に英語も簡単だったし。

Factotum
sound track on amazon.com
books on amazon.com
Produced: 2005
Directed by: Bent Hamer
Writing Credits: Charles Bukowski, Bent Hamer
Cast:
Henry Chinaski:Matt Dillon
Jan: Lili Taylor
Laura: Marisa Tomei
この人のストーリーは自伝的なのですが、タイトルの『Factotum(雑用係の意?)』が示すように、この映画では特に主人公・チナスキが食っていくためにした色々な仕事と、どうしてそれをクビになったかを中心に、チンナスキという「ライター」の破天荒な生活を紹介して行きます。

氷屋さんでバイトしているときは、配達に行った先のバーで飲み始めちゃって、トラックに積んだ氷が全部溶けてクビ、とか、ピクルス工場で働いたときは、仕事が詰まんなくなるとバーに飲みに行っちゃってクビ、とか、どーしても真っ当な仕事が出来ない人です。

仕事が続かないんだから貧乏なわけで、住むところも基本的になく、人の車からタバコを盗んで吸うような生活をしながら、短編を書いては自分の好きな雑誌に投稿し続ける。バーで知り合った女とエッチし、なんとなく一緒に住むようになり、みたいなことを繰り返して行きます。

私がブコウスキの小説を読んだ印象では、この人は相当ぶっ飛んでいて、こういう生活をするのが好きなのかと思ってましたが、映画の中のチンナスキが、仕立てのいいスーツとか、高い葉巻、ヨーロッパ旅行、はたまたいい家を持つこと、なんかに憧憬があると知って驚いてしまいました。

小説を読むと、アル中で貧乏でハチャメチャな生活の描写がすごい可笑しくて、楽しんでいるとしか思えないんですけど、あれはシニカルな表現だったのだなあ、今、考えてみると。もう少し英語が出来たら、可笑しみの中にかいま見える悲哀みたいなものを読み取ることができたのでしょうか。

部分部分はコミカルなのですが、というか、仕事に飽きると飲みに行っちゃうような人の話が可笑しくないわけはないのですが、映画全体としてはマジメなスタンスで、書かないといられないチンナスキが、ライターを目指す下積み時代の苦労話で、特にクライマックスも何もなく、ぶっちゃけ面白くないです。

それにしても主役のマット・ディロン。この人って、『リトル・ダーリング』とか『マイ・ボディガード』に出てたんだよね。憶えてる人、いるかなあ。それがアル中の役をやるようになるとはねえ。時の流れは早いもんだ・・・。

Tales of Ordinary Madness Tales of Ordinary Madness
Charles Bukowski (1984/01)
これが私が読んだブコウスキの短編集です。まだ持っているので、もう一回読んでみようかなあ。
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Key Words 
映画 酔いどれ詩人になるまえに チャールス・ブコウスキ マット・ディロン
| コメント(0) | 【2007/01/02 12:31】
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「嫌いなら観なきゃいいじゃん」と言うほど馬鹿げた理論はない!とアジテイトする『姫のお楽しみ袋』

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