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『Great World of Sound』-イタ過ぎて観ていられない
Great World of Sound

マーティン(パット・ヒーリィ)は、音楽プロデューサーを養成します、という広告を見て、Great World of Soundに面接に行くのですが、それがアムウェイとかああいう、セールスの会社なのです。

Great World of Sound
Produced: 2007
Director: Craig Zobel
Writing Credits: George Smith, Craig Zobel
Cast:
Martin: Pat Healy
Claewnce: Kene Holliday
Pam: Rebecca Mader
Gloria: Tricia Paoluccio
こういうのにひっかかったことありますか?私はあるんですよ。ずっとへらへらバイトとかしてて、なんかなあ、そろそろまともな仕事がしたいなあ、でも事務とかつまんなくてやりたくない、英語が勉強できるような仕事がないかなあ、なんて思ってたら、ひっかかったんですねー、英語の教材を売る仕事!

映画の中で、セミナーと称して、「音楽ビジネスとは」と説明したり、「私はこの仕事でこれだけ儲けました」って話とか、これは、お金を騙し取っているんじゃない、人助けなんだ、って強調するところとか、私が引っかかった英語教材販売とおんなじなんだよねー!

この会社は、どうやって人を騙すかというと、オーディションと称して人を集め、一曲演奏させて、「CDを作るのには10,000ドルくらいかかるけど、こちらが70%、そちらが30%負担することになるが、資本はあるのか」と、お金を出させる。3,000ドル出させるのが目標なんだけど、そんなにないなら、1,000ドルでも500ドルでもいい。そこはセールスの腕前というわけだ。

このオーディションに来る人たちは、映画を撮っているとは知らないで、マジでオーディションに来た人たちだそうで、このシーンが可笑しいはずなのですけど、全然笑えませんよ~。痛いです。みんなお金ないのですが、セールスマンに「このチャンスを逃していいのか!君は才能があるのに」とか言われて、人にお金を借りに行ったりしてまで払ってしまう。

それと、マーティンという主人公は、この仕事を、本当に才能のあるミュージシャンを発掘してプロデュースすることによってお金を稼ぐ、と真剣にがんばるし、また、時々本当に才能のある人がオーディションに来たりすると、素直に感動してしまい、「お金がない」と言われると自分のポケット・マネーで払ってでも、CDを作ってやりたいと思ってしまう。

こういうの、第三者として見ていると、なんで騙されるんだろう、明らかに詐欺だってわかるじゃん、と思うんですが、「儲かる仕事、やりがいのある仕事、人を助けることのできる仕事、というのは、大変なんだよ」みたいに言われると「そーかなー」と思ってしまうんですよ。

とにかく観てて一番辛かったのは、お金を騙し取られる人たちは貧乏な人たち、っていうことでした。「なぜミュージシャンになりたいの?」と聞くと、「もうウェイトレスなんかやりたくないから」とか言うんですよ。こんな行き場のないような生活をしている人たちが、唯一希望を持っているのは音楽で成功すること、そんなささやかな希望につけこんで、なけなしのお金を騙し取るっていうのがもう・・・・・。

主人公のマーティンもすごく貧しくて、奥さんがアーティストなんだけど、仕事としては、百円ストアで売るようなマスコットとかを作って生計を立てている。要するに内職ですよね。マーティンは、他に仕事もなく、奥さんの作るマスコットに色を塗るのを手伝ったりしながらなんとなく生きている。で、多分、これじゃいけないな、と思ったんだろうな。そして音楽に関わる仕事がしたい、本当に才能がある人を世に出してあげたい、とナイーヴではあるけど純粋な気持ちでがんばろうとしている。

これって、音楽業界のウラにある悲しい世界、という見方もできるけど、今のアメリカの悲惨な状況を表している、と思った。アメリカ、というよりも、資本主義社会って要するにこういうことなんだろうな、って感じ?貧乏人からでも金を取る、というか貧乏人が損するようにできている。マーティンも、その他のセールスマンたちも、お金がかかる学歴を手に入れられなかったせいで、こんな詐欺まがいの仕事しかできない。

私、昔は、何も会社員にならなくても、バイトでもなんでも、がんばって稼いで生きていけばいいじゃん、と思ってたけど、今、そうは行かないんだよね。時給のバイトでは、まじめに長時間働いても、自立して生きていけるようなお金を稼げない。会社の重役とかになったら、遣い切れないほどの高給が出るというのに、肉体労働でも一生懸命地道に働くよ、と言っている人たちが自立できない位の給料しか貰えないって、なんかおかしいと思う。

すごい痛いのは、マーティンは才能があると信じた女の子のお父さんを説得し、自分のポケットマネーも使ってCDを作ろうとする。でもこのGreat World of Sound自体が詐欺なわけだから、CDなんか出ない。それですごく絶望する。で、これは人を騙している、とやっと気が付くのだけど、だらだらと流されてまた別のオーディションをする。そこで本当に素晴らしい女性シンガーに出逢うのだが、この人を騙したくない、と思い、一度は契約しない、と追い返す。しかしマーティンは、お金がないと家に帰れないような状況に追い込まれて、この女性からお金を取ってしまうのだ・・・・・。

そのときのマーティンの気持ちを考えると、心が痛い。この人はいい人で、お金のために人を騙すなんて、しかも音楽を媒体としてそんなことするなんて、考えても見なかったと思う。でもそういう状況に追い込まれてしまう。こういう人がそういう状況に追い込まれてしまう社会って、なんなんだと思う。

最後は、結局辞めてしまったマーティンが、奥さんに、「今日、仕事行かないなら、この金魚のマスコットに色塗るの手伝ってくれる?」と言われて、色を塗ってるシーンで終わる・・・・。あああ!

key Word 映画 パット・ヒーリィ 音楽 セールス
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考えさせられた映画 | コメント(0) | 【2008/10/04 08:58】
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『ウェルカム・ドールハウス』-こっちの方がよっぽどイタイです
Welcome to the Dollhouse

7th gradeっていくつだ?12、3歳?いやー、主人公のドーン、可哀想だよな。アタシも中学のときいじめた子がいたよ。ブスで、頭悪くて、ダサくて、なんか見ててイライラすんだよね。こういう子が自分の子だったら、何て言って上げられるだろう?大人になった今だったら、こういう子が結構垢抜けて可愛くなったり、可愛い子が結構ちんちくりんになったりすることもあるから、「負け組みがずーっと負け組みってわけじゃない」って言ってあげるしかないなあ。でも毎日学校行くの苦痛だろうしね。

ウェルカム・ドールハウス
dvd on amazon.com
Produced: 1995
Director: Todd Solondz
Writing Credits: Todd Solondz
Cast:
Dawn: Heather Matarazzo
Brandon: Brendaon Sexton III
しかもこの子は家でも疎外されてるしさー。妹のミシィはすっごい可愛くて、お母さんのお気に入りで、あからさまに差をつけられる。お兄ちゃんは学校でもドーンのようにダサ系の扱いされてるみたいなんだけど、お兄ちゃんの方はもう開き直って、モテようとか愛されようとか思わない、自分だけがんばってわが道を行くって悟っちゃったみたいなんだけど、ドーンは女の子だからかなあ、「愛されたい」「ポピュラーになりたい」って切実に思ってるんだよね。お兄ちゃんみたいになれれば楽なんだけど、こればっかりは努力してそうなれるってもんでもないしねえ・・・。本当にどうしてあげたらいいかわからないわ。

ドーンをいじめるガキ大将のブランダン、この子はいいね~。容赦なくドーンをいじめるんだけど、本当はドーンのことが好きなの。でもこの「好き」は多分、自分が孤独なのをドーンの中にも見たからなんだろうなあ。けしてドーンのこと可愛いとか思ったからじゃない。負け組み同士で傷をなめ合いたかったのよ。しかも、ドーンは人気ないから、自分でもやすやすと受け入れてくれる、なんていう打算もあったのかもしれない。だから、ドーンが「私はスティーヴが好きだから、あなたの彼女にはなれない」って言ったとき、傷ついただろうなあ。

ドーンが好きになっちゃったスティーヴは、お兄ちゃんの友達の高校生で、バンドやってんだけど、典型的なヒモタイプ。かっこよくて、ギターも上手くて、女にモテて、でも努力はしないし、人からの批判されるとすぐ怒るし、でも自分は必ずロックスターになると信じているタイプ。あんまり他人のこと気にしないから逆に、ドーンとも普通にしゃべったりするので、ドーンは受け入れてもらえたような気になってしまう。

とまあ色々あるんだけど、やっぱりドーンは誰からも愛されてないんだよね。ブランダンは家出してニューヨークに行っちゃうし、スティーブはもちろんドーンなんか対象じゃないし。ミシィが誘拐されたりして、私はマジに殺されてたらいいのに、と思っちゃったけど無事に帰ってきて、誘拐されたせいでますます親の愛情を独り占めするようになるし。ドーンの状況は全く変わらないまま、映画は終わってしまう・・・・・。

こんな身も蓋もない映画作るの誰だよ?!と思ったら『ハピネス』のトッド・ソロンズ監督なのね。わかる~!『ハピネス』も救いないもんなあ。『ハピネス』って続編出るらしいじゃん。いやーたまたま『リアリティ・バイツ』とバック・トゥ・バックで見たけど、こっちの方がよっぽどイタイ。自分でどうにもできないし、年齢的に。

PS
いつものことですが・・・・・『ウェルカム・ドールハウス』って邦題は、反則だと思いませんか?これだと「ドールハウスさん、よくいらっしゃいました!」って意味に変わっちゃうでしょ?「トゥ・ザ」っていうのがカタカナにすると収まり悪い、とか思うんだったら日本語の題名付けなよ。『人形の館へようこそ』でも『ドールハウスへようこそ』でもでいいじゃない。別に捻らなくても。こういうセンスがわからないんだよな~。

key Word
映画 ウェルカム・ドールハウス トッド・ソロンズ ヘザー・マタラッツォ エリック・メビウス ブレンダン・セクストン・Jr
考えさせられた映画 | コメント(20) | 【2008/09/02 08:53】
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『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』-日本でも発売しなさーい!
Knocked Up

「Knocked up」というのは「妊娠させられちゃった」という意味なんだそうです。いやー、英語は奥深い。そのスラングそのままタイトルにしちゃったこの映画、製作が2007年なので当然『ジュノ』と比べられちゃうのですが、お察しのとおり私はこっちの方が好きです。

Knocked Up
Produced: 2007
Directed by: Judd Apatow
Writing Credits: Judd Apatow
Cast:
Ben: Seth Rogan
Alison: Katherine Heigl
Pete: Paul Rudd
Debbie: Leslie Mann
Jonah: Jonah Hill
妊娠させられちゃうアリソン(キャサリン・ヘイグル)は20代中盤で、LAのTV局のパシリをやりながらブレイクを狙っていたのですが、ついにアメリカの人気芸能番組『E!』のレポーターに抜擢される。で、お祝いにお姉さんのデビー(レスリー・マン)と、ヒップなクラブに繰り出す。嬉しくてちょおおお酔っ払ったアリソンは、シラフだったら絶対ヤラないだろうというMan Boobs(男の乳)があるようなベン(セス・ローゲン)とヤってしまう。

翌朝、自分のベッドにベンが寝ているのを見てサイコーに後悔するアリソンなのですが(ああ~わかるなこの気持ち)、一応一緒に朝飯なんか食べに行くと、ベンはええ年して無職。4、5人の男友達とむさくるしい共同生活をしていて、そいつらと映画に関するウエッブ・サイトを運営し、本気でそれで生計立てようとしているという、とんでもない男なのでした。

で、二度とコイツと会いたくないと思うのだが、妊娠してしまったことを発見・・・・・仕方なくベンに連絡を取る・・・・・

このアリソンのやってることっていうのが全て私には理解できてしまう!酔っ払って超イケテない男と寝てしまう・・・・。コンドームを使わなきゃ、と思っているのに、快楽に流されてついなしでやってしまう・・・・・・。白昼夢で「こんな男と寝たのかアタシは!」と突然脳裏に浮かんできて、周りに人がいるにもかかわらず一人で「ちっくそっ」とか言ってしまう・・・・・。わかる!わかるぜ!アリソン!!

で、妊娠が発覚した後、パニくって泣いて、でも自分で自分を奮い立たせてベンに電話し、「あなたの子なんだから協力してもらうわよ」と言いながら、ベンにプロポーズされると断ってしまったり、町で友達に会うと、大きいおなかの自分と冴えないベンが恥ずかしいとか、子供が欲しいと思わないのに妊娠するっていうのは、女の人にとってそれこそ世界の終焉なのよ。でも何が正しいかと考えてみると、生んだ方がいいなと決断して、そうなったらそうなったで今度は赤ちゃんの服とか買うのが結構楽しいという、この矛盾!

こういう複雑な思考回路が『ジュノ』ではあんまり見られなかったんだよな。まあ、25歳くらいになると自分の仕事を持っていたり色々あって、16歳の人生の方が物事が単純なのかもしれないけどね。

あと面白いのは、ベンが一緒に住んでるむさくるしい男友達。みんな可笑しいんだけど、中の一人が『スーパーバッド』のジョナ・ヒル。この人は今売れっ子だよねえ。私でさえすでにこの人の出てる映画4、5本観てるもん。とにかく、こいつらみんな映画ヲタで、作ろうとしているウエッブ・サイトが、「普通の映画に出てくるエロシーン」に関するサイトなのだな。例えば、女優の名前で検索すると、その女優がどの映画で何分間乳を出しているかがわかる、とか。だもんで、会話の端はしに映画ネタが出てくるので、そういうところでも楽しめる。

それから、アリソンがレポーターをやってる『E!』というのは実在の芸能番組で、アカデミー賞のときなんか取材に来ちゃったりしているのだけど、この映画でもアリソンが2006年のアカデミー賞のレッドカーペットでセレブたちに

「E!最高!」

とか言わせようとマイクを向けるシーンが実際にあって(待てよ、特典映像だったかも)、その中には、スティーブ・カレルとか、あと、なんだっけ、あの鼻の曲がってるいい男、ウィルソン?自殺未遂したヤツ。あいつとか、あとこれは特典映像で、エヴァ・メンデスとか『デスパレート・ワイブス』の女優とかが『E!』に出演して、アリソンとビッチ合戦を繰り返す、という場面もあった。映画の中で、映画ファンであるベンたちが有名役者たちをこき下ろすシーンとかたくさんあるのに、こうやってカメオ出演しちゃう人たちは、洒落心があるつーかなんつーか。

これだけでも十分楽しめるのですが、さらにアリソンのお姉さんデビーとその夫ピート(ポール・ラッド)の結婚生活が冷え切っていて、ピートがベンと仲良くなって色々、結婚生活に対する洞察を話し始めるあたりなんかもなかなか深くて(もちろんギャグ連発なのですが)結構いい映画です。

これ、日本で出てないでしょ?!信じられない!こんなユニバーサルなストーリーで、しかもアメリカでは結構有名で、良く出来た映画なのに。IMDbによると、スティーブン・スピルバーグがわざわざ「いい映画ですね」と言う為に監督のジャド・アパトーに電話してきたってくらいなんだから。

PS:百さんのコメによると、今年公開されるそうです。おかしいなあ、最近、検索しても出てこないんだよ。検索の方法を変えないといけませんかね。まーそんな一生懸命検索してるわけでもないんだけどさ~

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ジャド・アパトーのもう一つの当たり映画『40歳の童貞

key Word
映画 ジャド・アパトー キャサリン・ヘイグル セス・ローゲン レスリー・マン ポール・ラッド ジョナ・ヒル
気になる映画 | コメント(5) | 【2008/05/25 00:11】
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『ファーストフード・ネイション』-流した血や涙で作った利益はどこへ行くのか?
Fast Food Nation

原作『ファストフードが世界を食いつくす』はリサーチ本だと思うのだけど、そこからキャラクターを起こしてストーリーを作ったのはブリリアントだと思った。単に事実を伝えるドキュメンタリーとして見るよりも、そのビジネスやシステムが人々に与える影響や、その人々の思いが伝わってきて、この題材に関して少し考えてみよう、という気にさせられる。


dvd on amazon.com
Produced: 2006
Directed by: Richard Linklater
Writing Credits: Eric Schlosser, Richard Linklater
Cast:
Raul: Wilmer Valderrama
Sylvia: Catalina Sandino Moreno
Coco: Ana Claudia Talancón
Esteban: Juan Carlos Serrán
Don Anderson: Greg Kinnear
Mike: Bobby Cannavale
Amber: Ashley Johnson
Brian: Paul Dano
Cindy: Patricia Arquette
Rudy Martin: Kris Kristofferson
Pete: Ethan Hawke
Paco: Lou Taylor Pucci
Alice: Avril Lavigne
昔、「動物を殺すのは可哀想だから、牛やブタは食べない」というベジタリアンのご都合主義的正義感にうんざりしたものだが、現在は「殺す・殺さない」の問題ではないらしい。「殺す・殺さない」の問題であれば、「じゃあ魚はいいのかよ、植物ならいいのか?殺すのが可哀想なら、何食って生きていくのよ?木の実?」という議論になって行くわけなのだが、現在の問題は家畜をどのように扱っているか、ということのようである。

どーせ殺して食っちゃうんだから、と思うかも知れないけど、それは違うなあと思った。一匹にかろうじて必要なスペースで横も向けないようなところに閉じ込められ、ミルクを生産する道具として扱われる牝牛。狭いところにたくさん入れられているのでイライラしてケンカするので、くちばしを切られてしまうニワトリ。

そして、人間も搾取される。人件費節約のためにメキシコからの不法入国者を使う。生産性を上げるために安全性を無視する。労働者が怪我をすれば、怪我した人の非を見つけ出して保障を払わない。

ファスト・フード会社のマーケティングをしているドンが、調査のために会うルディという農場主が、

「これはいい人対悪い人という問題ではない。"利益、利益、更なる利益"と繰り返す機械との戦いなのだ」

というシーンがあるのだけど、そうだなあと思った。確かにビジネスというものは、効率良く生産することが当たり前なのだが、ニワトリにケンカさせないためにくちばしを切ってしまう、という結論が出るのは、どっか人間的情緒がかけていると思う。

最後に出てくる牛の屠殺のシーンを見ると、あんなことまでして肉食わなくてもいい、って気にさせられる。昔は日本でも、穢多・非人といって差別されていた人達が屠殺を請け負っていた。要するに他の仕事が出来るなら、誰もやりたくない仕事なわけじゃない。それを不法入国者にやらせて、安く消費者に提供するってのもなんだかなあ。

食べ物が異常に安くなると、感謝の気持ちがなくなるじゃない。映画の中でも、ファスト・フードの店で働く高校生が、ハンバーガーのパテを焼く前に床に落っことしても気にせず焼いちゃったりというシーンが出てくる。食べ物っていう意識がない。個人経営している農場だって、結局は殺して食べるために家畜を飼っているわけなのだけど、毎日家畜の世話をして身近で過ごすことによって「ああ、これを食らって生きているのだな、私たちは」という意識はある。ある程度値が張るからこそその価値というものがわかるのじゃないかなあ。

また、環境保護の活動家の大学生たちも出てくるのだけど、これも現在のアメリカを象徴しているなあと思った。この映画ってあんまり評価されてないみたいなんだけど、ところどころに何気なく、現在のアメリカを鋭く切っているセリフとかちらりちらりと出てきて、「なるほどね」と思わされる。きっと、こういう問題に対してすでに色々知っている人から見ると、「今さら何を!」と思うのかも知れないけど、普段余りこういうことを意識していない人達に「あなたはどう思いますか?」と問いかけるには非常にいいアプローチだと思う。

それと出演者がなかなかいいよね。メキシコ人の不法入国者で、精肉工場で働くラウルを演じるのが、『70's Show』で、ちょっとおかまっぽいインド人を演じていたウィルマー・バルデラマ。今回マジメな役なので最初「どっかで見たことある・・・」と思いながらしばし思い出せなかった。その奥さん・シルビアは、『The Hottest Statet』でキョーレツに印象に残ったカタリーナ・サンディノ・モレノが演じている。実物を見たらすっごくキレイな人なんだろうけど、銀幕の中ではムチムチした身体で、すっごい普通っぽさを持ってる女優さん。この夫婦は本当に普通の、私たちが共感できる人間的なキャラで、こんな誠実な人達が大きなビジネスという機械に巻き込まれて行く様を見ると「ビジネスなんだからしょうがないじゃん」と思えなくなってしまう。

また、大腸菌に汚染された肉を平気で売っているビジネスマンにブルース・ウィリス(ビジネスマンとしては最低の職業倫理の持ち主なんだけど、ご近所のおじさんとか、レストランのお客さんとしてはすっごく気さくでいいおじさんって感じの人を好演)、こういう世の中で自分なりに誠実に生きて行こうとする風来坊的なキャラにイーサン・ホーク、その影響を受けて色々考える賢い姪・アンバー役にアシュレイ・ジョンソン(この子も見たことあるんだけど思い出せない)も、18歳の多感で理想主義、でもだからこそこの世代の子たちに色々考えて欲しいな、という役柄を好演。そのお母さん役がパトリシア・アークエットで、ああ、『トゥルー・ロマンス』でサイコーにセクシーで可愛くてぶっ飛んだ役をやっていたこの人が、時給10ドルの仕事をしながら高校生の娘を育てるスレたお母さん役を演じる年になったのね、と感慨深い。

それから、アンバーがファスト・フード店で働くブライアンにポール・ダノ(これと『リトル・ミス・サンシャイン』を見ると、現代の負け組高校生を演らせたら、この人の右に出る者はないんでないかと思う)、アンバーが出逢う革命を夢見る大学生に、『サムサッカー』からかなり成長したルー・テイラー・プッチ(名前見るまでわかんなかった)、その仲間のいかにも裕福な家庭の娘って感じの環境保護かぶれ大学生をアヴリル・ラヴィーンが結構好演していて、新旧取り混ぜたこの配役はなかなか興味深かった。

最後、屠殺場で泣きながら仕事をしているシルビアを見て本当に心が痛んだ。なんでこの人達は故郷を捨ててアメリカに来たんだろう?時給10ドルでこき使われて、不法滞在でなんの保障も権利も無い、そんな立場にいるのになぜ??と思いながら観てたんだけど、「あ!この人達の本国での生活は、これより更に悪いのか」と気が付いて、更に落ち込んだ。一見なんの関係もないように見えるけど、すっごく貧しい国があるというのも、資本主義の国が行き過ぎた搾取をしたせいなんだと思う。人生っていうのはフェアじゃないし、みんなが平等に幸せにはなれないと思うのだけど、今の企業の利益ってどこに行くのよ?と思う。一握りの人達が、使い切れないくらいのお金を持つためだったら、馬鹿げてるよね。

余談ですが、邦題の『ファーストフード・ネイション』・・・・・。いい加減「ファスト・フード」に訂正したらどうかね。もう日本人だって、マクドナルドが「First Food」じゃなくて「Fast Food」、つまり速い、即席の食べ物だってことはわかってるんだから・・・・・。

■こちらはコミカルな健康の観点から同じテーマにアプローチ『スーパーサイズ・ミー

Key Word ファーストフード・ネイション リチャード・リンクレイター エリック・シュローサー グレッグ・キニア ドン イーサン・ホーク パトリシア・アークエット アヴリル・ラヴィーン カタリーナ・サンディノ・モレノ クリス・クリストファーソン ポール・ダノ アシュレイ・ジョンソン ウィルマー・バルデラマ ルー・テイラー・プッチ
映画感想 | コメント(0) | 【2008/02/10 23:23】
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「嫌いなら観なきゃいいじゃん」と言うほど馬鹿げた理論はない!とアジテイトする『姫のお楽しみ袋』

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